地球温暖化や海洋汚染が世界中で問題視される中、日本でもプラスチックごみの削減に向け、政府が20年7月からレジ袋の有料化を義務付けた。自然保護に関する活動や発言を主体的に行っている芸能人、著名人も少なくなく、これまで何人か取材してきたが、渡部豪太(35)のスタンス、生き方に共感できるものがあった。

渡部は、ペットボトルや古着から作られる再生ポリエステルや木材から生まれるリサイクル原料など、サステナブル(持続可能)な素材や製造技術にこだわったブランド「O0u」(オー・ゼロ・ユー)のブランドアンバサダーに就任。26日に都内で行われた会見に、再生ポリエステルで作られたパンツなど、同社の商品を着て登壇した。

渡部は、ワーキングホリデービザで1年、カナダに行った19歳の時に母国・日本のことをあまりに知らなすぎたことを痛感し、帰国後、日本の伝統的なものに着目するようになったという。その中で「何で、今の人…自分は使わないんだろう」と思い、手ぬぐいを使い始めたという。「すごく便利で(最終的には)土に還る。江戸時代はゴミが全くなかったと言うじゃないですか? 本当にそうだった可能性がある」と、今日まで愛用してきたという。

今年に入り故郷・茨城県日立市の海を見た際、波打ち際にゴミが大量に打ち上げられていて衝撃を受けたという。

「魚を食べるのが好きなんですけど、魚が(プラスチックごみを)パクパク食べていて(自分が)食べているのかと思うと、すごく嫌だと思った。変えられるの、人間だけじゃないですか。海のゴミがどこから来ているかと言ったら…多分、その辺の町なんですよ」

その日から「落ちているプラスチックゴミを1個減らせば、何かが変わるかも知れない」と思い始め、食材を買いに行く際、容器を持参するようになった。

「お魚屋さんやお豆腐屋さんに行く時、容器を持っていって『これに入れてください』と言います。ペットボトルに入った商品は好きなんですけど、買うのをちゅうちょするようになった。水を飲むのが好きなんですけど、水筒を持ち歩くようになった。お店屋さんで『水道の水で良いんで、くんでくれませんかませんか』と言うと『いいですよ』とくんでくださる。テークアウトのコーヒーも、水筒に入れて持ちかえる。ゴミになる無駄なものは出さないよう心掛けています」

環境保護への高い意識を感じさせるが、発信力の高い芸能人として表に目立った動きをするのではなく、あくまで一市民として、自分の身の回りの環境から変えていこうという自然体の姿勢に、すごく共感できた。その上で、あえて「社会活動をしていきたい、世界に発信していくことで、地球を変えていきたいなどと考えていますか?」と聞くと、極めてシンプルな答えが返ってきた。

「ごみ拾いをしたいです」

真意を、こう続けた。

「ごみ拾いが一番簡単に、誰でも出来るんですよね。1人1日、10個のゴミを拾ったら…そういう小さいことは無理なく出来て積み重なる。(俳優として)もし、シンボリックな活動が出来るとしたら、今、コロナ禍ですが『ごみ拾い、一緒にしませんか?』と言って、やりたい」

無理なく出来る、ごみ拾いの裏には、もう1つの考え方がある。

「ゴミを拾っている人を見たら、俺も拾わなきゃなと思う人がいるかも知れない。押しつけは、すごく嫌じゃないですか? なので、一緒にやりませんか、という一助になれたら。活動をしていく中で、出来ることが生まれてくるかも知れませんし、餅は餅屋で『それだったらやれるよ』と言う人が現れるかも知れない。動いていくことが大事」

自分の身の丈に合わせたことを、まずは身の回りから、強制しないで…。コロナ禍で閉塞(へいそく)感が高まる一方の今を、楽に生きるヒントが渡部の言葉の中には、たくさんある。【村上幸将】