おちょやん:なぜ千代の周りはダメ人間ばかり? 「人の優しさ」を描く、脚本家が作品に込めた思い

連続テレビ小説「おちょやん」の脚本を担当する八津弘幸さん
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連続テレビ小説「おちょやん」の脚本を担当する八津弘幸さん

 杉咲花さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おちょやん」(総合、月~土曜午前8時ほか)の最終週「今日もええ天気や」が、5月10日から始まる。ヒロイン・千代(杉咲さん)が、喜劇女優として成長する姿を描いてきた本作だが、これまでに“最低の父”テルヲ(トータス松本さん)によって奉公に出されたり、夫・一平(成田凌さん)に浮気されるなど、幾多の困難を乗り越えてきたことも、視聴者から大きな反響を呼んでいる。本作で一番描きたかったのは「人の優しさ」だという脚本の八津弘幸さんに、作品に込めた思いを聞いた。

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 八津さんは、作品で一番描きたかったことについて、「ドラマでは『泣き笑い』という言い方をしていますが、生きていればいろいろなことがあります。辛い人生を歩まざるを得なかったり、その中で間違いを犯してしまうことも。誰にだってあり得ることです。だからこそ、そこからやり直し、再生し、許すことを描けないかなと思いました」と語る。

 「ただし、それを描くからには中途半端なきれいごとを入れると、『許し』の部分まで嘘(うそ)くさくなってしまいます。なので苦しい出来事からも目をそらさずに、容赦なく書くと腹をくくりました。必ず立ち直れるという願いを込めて」と意図を明かしていた。

 また、「だからこの作品にはダメなやつばかり登場するんです。なぜか男の方が多いですが(笑い)」という八津さんが、やり直しを描いていく中で、一番悩んだのは、やはり「テルヲ」の存在だという。千代は幼いころから、テルヲの都合で芝居茶屋「岡安」に奉公に出された。それ以降も、たびたびテルヲは金をせびりに千代の元を訪ね、ときには千代の持ち金を持ち出すこともあった。そんな“最低の父”として描かれ続けたテルヲをどう決着させるか、といった部分だ。

 「たとえ病気で余命僅かという設定でも、千代がテルヲを許すことは絶対にない。それでも、ほんの少しだけ、最後にお父ちゃんだと受け入れることで、死別したあと、千代は本当の意味で一平と向き合おうとします。テルヲを介して千代と一平を前に進めたかった。それこそが最後の最後にテルヲの残した唯一の親らしさであり、テルヲ自身にとっての救いではないかと思いました」。

 しかし、その一平との夫婦の絆も、取り返しのつかない愚かな過ちによって、引き裂かれてしまった。最終週の見どころについて八津さんは、「千代と一平がどう決着するのか。千代は幸せになれるのか。これに尽きます」と予告していた。

 「おちょやん」は、上方女優の代名詞といえる存在で、「大阪のお母さん」として親しまれてきた女優の浪花千栄子さんの人生をモデルにしながらも、物語を大胆に再構築し、フィクションとして描く、103作目の朝ドラ。

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