宝塚歌劇団の月組トップ珠城(たまき)りょうが21日、兵庫・宝塚大劇場で、退団公演「桜嵐記(おうらんき)」「Dream Chaser」の千秋楽を迎え、本拠地に別れを告げた。

コロナ禍で数千人に見送られるパレードは取りやめも、サヨナラショーはわかせた。宝塚第10代トートを務めた「エリザベート-愛と死の輪舞-」から、「闇が広がる」を披露。男役群舞のセンターに立った。

珠城は16年、入団9年目の早さでトップに就き、14年目での退団。男役として恵まれた体格、武器の包容力を磨き、在位5年半を超えて退く。サヨナラショーは、サングラスにタバコと、近年の宝塚では異例ショーで話題を集めた「BADDY」(18年)を全員で歌い、締めた。

ノリノリのナンバーで本拠地最後の作品を終えると、最後の大階段あいさつへ。珠城は、タカラジェンヌの正装、緑はかま姿で登場し、明るく晴れやかな表情で口を開いた。

「出演者全員がそろって今日という日が迎えられましたことを、心から幸せに思っております。私はこれまでさまざまな色濃い時間を経験して参りました。喜びに心がおどったとき、幸せで涙があふれたとき、苦しくて前を向くのが怖かったとき、その経験のすべてが私を成長させてくださいました」

入団9年目でトップにスピード就任し、13年以上親しんだ“ホーム”への思いを吐露した。

「どんなときも私は強く前を向いて歩んでくることができました。その原動力のすべては、ずっと支え続けてくださった方。不器用な生き方しかできない私に、いつもそばでたくさんの愛を伝えてくれた大切な大切な月組の仲間。そしてそんな私を信じ、共に戦ってくれたファンのみんなの存在です」

支えてくれた仲間、ファンに感謝。「守るべきことがあると、人は何倍も強くなれる」と続けた。

「この立場になって、その言葉の本当の意味を知ったように思います。私は宝塚が大好きです。みなさまが大好きです。約14年間、男役として歩んで参りました日々、最高に幸せでした。これまで珠城りょうに携わってくださいましたすべてのみなさまに、心からの感謝をこめまして、ありがとうございました」

同期からの花は、雪組の久城あすから贈られた。

珠城と同時退団するトップ娘役の美園さくらは「今、こうしてふるさとに別れを告げるときが参りました」「今日この日まで、私に大切なことを教え続けてくれたかけがえのない場所」と、自身を育ててくれた宝塚大劇場への思いを語った。

美園が「こんなにも幸せな時間をみなさまと共有できたことに、本当に感謝の気持ちでいっぱい。東京公演もまだありますので、もっともっと頑張りたい」と言えば、珠城が「はい、頑張ろう、よし」。息もぴったりに本拠地ラストの舞台を堪能。

珠城は、次期トップに決まっている2番手スター月城かなとを呼び寄せ「その後は月城かなとが率いていきます。みなさま、以後お見知りおきを」と、次期のバトンを託した。

最後は「月組恒例の千秋楽ジャンプを行いたいと思います」と言い「月組バンザーイ」。「この幸せな空間を目に焼き付けたいと思います」と言い、締めた。