女性への性的暴行の罪で実刑判決を受けて服役していた米人気コメディアンだったビル・コスビー受刑者(83)が6月30日、米ペンシルベニア州最高裁判所が有罪評決を破棄する決定を下して釈放された。

コスビーさんは2004年に同州フィラデルフィアの自宅で女性に性的暴行を加えたとして、18年に禁錮3年から10年以下の有罪判決が言い渡されていた。報道によると、同受刑者は担当していた元検事と15年前に不起訴合意を交わしており、最高裁は検察による裁判手続き上の違法があったと説明しているという。

弁護士に付き添われて自宅に戻ったコスビーさんは、車から降りて家の中に入る際には集まった報道陣らに向けてピースサインを見せる場面もあった。

そして、いったん家に入って着替えた後に家族らと腕を組んで外に出てきた際には「うれしいか?」との記者の問いかけには答えなかったものの笑顔も見せていた。その後、ツイッターに「常に無実を主張してきた」と投稿し、支援者への感謝の意を述べている。

薬物を使って性的に虐待されたと主張していた女性は、性的暴行と名誉毀損(きそん)でコスビーさんを訴え、06年に和解していた。ハリウッドで始まったセクハラ告発運動「#MeToo」が世界的に広がって以降、性的暴行で有罪判決を受けた初めての著名人だったことから、セクハラを告発して戦っている多くの被害者たちにとって今回の判決は大きな打撃となっている。

コスビーさんはこれまで他に60人を超える女性からも性的暴行やセクハラを告発されているが、いずれも訴追はされていない。

コスビーさんは80年代のテレビ番組「コスビー・ショー」で人気を博し、かつては「アメリカのお父さん」として知られていた。(ロサンゼルス=千歳香奈子)