【志賀貢 男の羅針盤】

【加齢によっておこる筋肉量の減少「サルコペニア」】年をとってくると、体の筋肉量が減る「サルコペニア」という状態が不安視されます。これは、社会の第一線を退いた人が最も気をつけなければならない症状の一つです。

 体の筋肉は、足や腕などに6割ついているのですが、その主成分は蛋白質。蛋白質は、生命を維持するためになくてはならない物質ですから、手足の筋肉が落ちて、蛋白質が減ると、体にいろいろな支障が起きます。まず、足腰が弱くなって転倒事故や骨折を起こしやすくなります。それが原因で寝たきりの状態を強いられることもあります。

 また、筋肉には血液が豊かで、免疫を維持する血液成分の白血球やリンパ球が多いので、サルコペニアになると免疫細胞が減少し、細菌やウイルスの感染を起こしやすくなります。カゼやインフルエンザ、誤嚥性肺炎を起こすようになります。

 さらに、筋肉は、糖分の蓄積をする場所でもありますから、筋肉量が減ると糖の代謝に影響が出て、糖尿病予備軍になりやすくなります。

【足腰の筋肉を鍛えて第二の青春を】こうしたサルコペニアの状態がつづくと、男女とも愛の交歓どころではなくなります。夜が訪れるのが負担になる、といっても過言ではないでしょう。

 足腰をいつまでも若々しく保つためには、適度な運動と栄養補給が必要です。そのために、おすすめしたいのが、インターバル速歩法です。

 散歩の時に、3分間早足で歩き、その後の3分間はゆっくり歩く。それをくり返すのです。もちろん、屋内で足腰を鍛えることもできます。しっかりした物につかまって、早足と遅い歩行での足踏みを、体力と相談して、くり返しましょう。

 そして、夕食は、パートナーと2人で蛋白質たっぷりの魚、肉、それに豆腐などの大豆製品を食べる。

 こうして2人でサルコペニアを予防していれば、必ず恋人時代のような青春が蘇ってくるはずです。

 ☆しが・みつぐ 北海道生まれ。医学博士。昭和大学医学部大学院博士課程を卒業。臨床医として診療を行うこと50年超、現在も現役医師として日々患者さんに接している。文筆活動においてもベストセラー多数。性科学の第一人者にして、近年は高齢者の臨終や性に関しても健筆をふるう。美空ひばり「美幌峠」「恋港」などの作詞も手掛けた。