元WBCライト級チャンピオンのガッツ石松(72)がこのほど日刊スポーツの取材に応じ、東京五輪へ出場する日本代表選手へのエールを送った。

ここまで金メダルを量産してきた日本代表。新聞などに掲載される当該選手の写真の説明には「ガッツポーズを決める○○選手」とある。このガッツポーズという言葉を広めたのがガッツだ。ガッツが持ってきたソフトボール上野由岐子投手の写真はガッツポーズじゃなかったが「説明はガッツポーズになっているよね」と顔をほころばせた。

世代的には2度目の東京五輪だ。64年は栃木県鹿沼市の中学3年生だった。「貧乏な家だったからね」。当時は、お金持ちの家にしかテレビはなく、学校帰りなどに漏れ伝わってくる実況に触れる程度だった。「ボクシングもそうだけど、バレーボールが人気があったかな。ただ、スポーツよりも、その日食べていくことに必死だったよ」。

中学卒業の2日後に上京し、働きながらボクシングジムに入り、8年がかりで、苦労の末にタイトルを取った。ライト級チャンピオンはアジア初だった。それだけに、練習の積み重ねが持論だ。選手の不安やプレッシャーには「プロとアマの違いはあれども、実績を残している人は、人一倍練習をやっている。基本練習を何年もやってきたんだから。練習は絶対に裏切らないし、それは勉強と一緒。不安があるのは練習が足りないからだと思った方がいい。桜の木だって、植えてからすぐに花が咲くわけじゃないんだから」。

さらに、選手の心構えとして聞く耳の重要性も訴える。「人の話を聞かない人には誰も話さないよ。誰もが1人で強くなっていくわけじゃないから」。そして、道徳心が必要だとも説く。「強ければいいというものでもないですね。人として生きる道、人としての心、つまり道徳心が大切です。一流になる人は道徳心があるし、これを人間性といいます」。

結果が出た選手もそうではなかった選手にも、ガッツはエールを送る。「青春は1度しかないもの。結果はともかく、自国開催の五輪に出場できたのは幸せなことなんだとかみしめてほしいですね」。【竹村章】

◆ガッツ石松(いしまつ)本名鈴木有二(すずき・ゆうじ)1949年(昭24)6月5日、栃木県粟野町(現鹿沼市)生まれ。74年にWBC世界ライト級チャンピオンになり、5度防衛。79年に引退後、本格的に芸能活動を開始。NHK朝ドラ「おしん」や米映画「太陽の帝国」「ブラック・レイン」などでハリウッドにも進出。96年には衆院選に自民党公認で出馬も落選。08年に鹿沼市民栄誉賞受賞。流行語になった「OK牧場」などユニークな語録で知られ著書も多数。