他人のことは言えないのだが、お調子者のオヤジには困ったもんだ…。

河村たかし名古屋市長(72)が、今月4日に表敬訪問した東京オリンピック(五輪)ソフトボール日本代表の後藤希友投手(20=トヨタ自動車)の金メダルを口に入れてかじったことが大問題になっている。ウケ狙いでやったのだろうが、芸人ではないし、いや日本テレビ系「スッキリ」のMC極楽とんぼ加藤浩次(52)は「芸人としても絶対ない」と断言している。まぁ、昔の相方ならやってたかもしれないが(笑い)。

モラハラ、コンプライアンスの問題が厳しく糾弾され、新型コロナウイルス感染拡大防止の緊急事態宣言が広がる中で、政治家とは思えぬ所業にハマカーン浜谷健司(43)でなくても「下衆の極み!」と突っ込みたくなる。

そう、問題は立場と時代だ。

実は記者も五輪の金メダルをかじったことがある。

今から13年前、日刊スポーツの毎週日曜日のインタビューコーナー「日曜日のヒロイン」の08年10月12日付に女子レスリングでオリンピック3連覇、「霊長類最強女子」の異名を取った吉田沙保里さん(38)にご登場を願った。

04年のアテネから北京、ロンドンと女子55キロ級を制した吉田選手だが、当時は08年8月の北京五輪で2連覇を達成したばかり。同年10月に日本で開催された世界選手権に向けて、練習を積んでいるところにおじゃまして話をうかがった。

世界選手権を放送して、密着している日本テレビ関係者、そして弊社のカメラマンと、記者以外は吉田選手と顔なじみの者ばかり。

吉田選手の取材、撮影をずっと続けてきて気安い関係の本紙カメラマンが「お久しぶり。金メダル掛けさせてよ」と言うと、吉田選手はあっさりOK。そしてカメラマンは記者にも金メダルを掛けることを勧め、カメラを向けて撮影をしてくれた。

「メダルをかじってみて」

カメラマンのポーズの注文にたじろいでいると、吉田選手は「たくさんあるから大丈夫ですよ」と笑ってOKしてくれた。当時は、五輪や世界選手権でメダルを獲得したアスリートが、かじりながら笑顔で撮影に応じていたのだ。そんな時代だった。

心やすくメダルをかじらせてくれた吉田選手の心遣いに感謝の意を表すべく、記者もできるかぎりのことをした。吉田選手が北京で勝った瞬間にスタンドで歓喜して踊る姿が、NHKの最高瞬間視聴率32・8%を記録した芸人、江頭2:50からの激励のコメントをもらうことだったが(笑い)。

河村市長の大失態を見ながら、当時のことを思い出した。そして、ちょっぴり不安になった。吉田選手は、嫌だったけど気を使ってくれたのかも、と。