フリーアナウンサー古舘伊知郎(66)が、16日に単行本「MC論」(ワニブックス)を出版する。

テレビの司会として1960年代から活躍した故大橋巨泉氏をはじめ、タモリ、たけし、さんまの「ビッグ3」、とんねるず、ダウンタウン、中居正広、みのもんた、関口宏、小倉智昭、黒柳徹子、安住紳一郎、羽鳥慎一、村上信五などを取り上げ、その手法、影響力などを分析した“交友録”でもある。

   ◇   ◇   ◇

10月から前NHKの大越健介さん(59)が、僕が前にやっていたテレ朝「報道ステーション」のキャスターに就任します。とにかく大越さんは、いい人選だと思う。あの人は、言っちゃいけないことは言わない。で“芯くった甘がみ”をするんで、僕はいいと思う。

そうしたら、業界のある人が「まあそういう論もあるでしょうけど、久米さんがやる時とか、古舘さんがやった時の『報ステ』とかとはね。ニュースを見てた人には(大越さんは)有名だろうけど、ニュースを見ない人もテレビに引っ張ってこなきゃいけない時代に、大越さんのネームバリューが、どこまでか」って。俺に対する気遣いも含めて言ったんです。

僕は「違う!」と。昔だったら、バラエティーからスポーツ実況からいろいろなジャンルをフォローしてないとか、映画俳優じゃないんだからとか、そういう論はあったかと思うしね。この人はこっちから見たらメジャーだけど、NHKのニュース番組のメジャーであって、こっちでは全然だと。

僕はそれこそが“情報が化ける社会”と書いて情報化社会。それこそがネット社会の到来だと思ってるんです。ネット社会になりつつある時に、これだけネットで大越さんて騒がれてるわけじゃないですか。紙媒体の方々は、デジタルでもやるわけじゃないですか。もう週刊文春っていう紙なのか、週刊文春デジタルかも分からなくなってるんだけど(笑い)。テレビも、そうだったりするじゃないですか。

だから、そういうのでいうと基本的に「大越さんて、誰?」っていう人が、昔と違ってすごくスパンが短い。1週間で「大越さんというジャーナリスト上がりの大物がいるんでしょ、ちょっとのぞいてみようかな」っていう人がいるんですよ。だから、別にこっちで売れてねーとか関係ないんですよ。ネットに出ることによって、自分自身が本当に知ってたか知ってないかも、よく分からない状態になっている。そして、知ってるかもとか、知ってる的なとか、知ってるみたいなとか。「映え」とか、「いいね!」とか。見る前から「いいね!」押すとか(笑い)。

そういう先走りの時代に入ってます。世の中、全てフライングと。中学2年生のオナニーみたいに触れば出ちゃうみたいな、そういう時代なんです。ぜひ、これを入れていただきたいんですけど。こういう面白い下ネタも満載ですから、この本。エロ大好きな人にも読んでいただきたい。ワニブックスにワニがいないから、これくらいのウソはいいんです(笑い)。

だから、僕は大越さんはそういう意味でも素晴らしい、ベストな人選だと思っているんですよ。やられたなと。僕の狭い器では、やられたな、大越さんの時代が来るなと。これが「ニュースステーション」から始まる“報道のテレビ朝日”をしっかり支えてくれるなと。あとは大好きな富川(悠太キャスター)を入れてくれって、これくらいですよ、本当に。勝手ながら思いますけどね。

大越さんが「報道ステーション」に来るということに、時代がピッタリ来てると思うしね。過激発言を望んでないし、久米さんの時代みたいに政治家と生放送で大げんかするニュースショーをどこも望んでいない。誰も見ないし、望んでいないと思いますし、見たい人がリモコン片手に、神様(視聴者)は見る時代ですから。大越さんを知らない人にはネットで“大越パブリシティー”が行き届きますから。ネットでのぞいてくれますから。大越さんのネームバリューっていうのも問題ないと思ってますから。そういう意味ではベスト。

極論すると「報道ステーション」の俺は、大越さんのためのつなぎだった、と。大越さん、俺はつなぎだったのか、と。いつか刺し違えてやる。アナウンサー出身バカにすんなと。何もしてないのに(笑い)。ほんと、それ本気で思います。口論しましたから。その、ある人と業界の人と。だって、いい人選だと思いません。僕はそう思うんですよ。あの「ニュースウオッチ9」の、あの人のうまさを知ってるから。僕はこういう司会はできないと思ったし、こういうニュースの読み継ぎはできないと思ったから。

だから、ギブアップしちゃったところがあって。その分、大越さんも「あんたみたいなのはできない」と思ってくれてたと信じるけど。だからちょっと認めちゃったって、勝手に。今回の「報ステ」の大越さんという人選は、危なっかしくない。かと言って、超安泰じゃない。ていう感じはするんですよね。大越さんって聞いた瞬間に、ちょっと見たくなっちゃった。どういう大人の回しをするかね。今、やってる局アナには申し訳ないんですけどね。(続く)

◆古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)1954年(昭29)12月7日、東京都生まれ。立大卒業後の77年にテレビ朝日入社。同8月からプロレス中継を担当。84年6月退社、フリーとなり「古舘プロジェクト」設立。85~90年フジテレビ系「夜のヒットスタジオDELUXE、SUPER」司会。09~94年フジテレビ系「F1グランプリ実況中継」。94~96年NHK「紅白歌合戦」司会。94~05年日本テレビ系「おしゃれカンケイ」司会。04~16年テレビ朝日系「報道ステーション」キャスター。現在、NHK「日本人のおなまえ」(木曜午後7時57分)司会など。YouTube「古舘Ch」。14日の東京・渋谷区文化総合センター大和田古さくらホールから初の全国ツアー「古舘伊知郎トーキングブルース2021」がスタートした。血液型AB。