【今週の秘蔵フォト】1972年に「ひなげしの花」で鮮烈にデビューした17歳のアグネス・チャンは、当時の野郎どもにとっては空から落ちてきた天使にしか見えなかった。いや本当に天使だったかもしれない。

 その後も「草原の輝き」や「小さな恋の物語」などの大ヒットを飛ばしたが、やがて表情は大人っぽさを帯び始め、74年には上智大学国際学部に入学。心理学を専攻する。75年7月には本紙のインタビューに応じ、8月20日に20歳を迎える心境について語っている。

「初恋も知らないよ。恋愛って心配することプラスまた心配なんでしょう。あこがれてはいるけれど待つしかないんだ。自分からアタックはできないから」と恥じらう表情を見せる。通常なら聞く側の胃液が逆流するような言葉だがアグネスなら許せるから不思議だ。

「友達ならほしい。何でも話せる友達がいたらいい。1人で寝る時、ふっと悲しくなることがあるの。幽霊も出そうで怖い。心理学で自分を分析すると、かなりの心配性。何でも心配しちゃう」とむしろ恋はしたくないと語った。さらには「オンナの子になってGパンはいてTシャツ着てオトコの子っぽくなりたいわ」とも。8月にはシングル「白いくつ下は似合わない」(作詞作曲・荒井由実)を発表して、デビューからのトレードマークだったロングソックスと白いドレスを脱ぐように、ちょうどアイドルとしてイメチェンを模索している最中のインタビューだった。

 結局、この願望が大きく目覚めたのか、翌76年にはカナダ・トロント大学に編入し、芸能活動を休止。78年に復帰した。90年代になってからアカデミックな国際的活動に励むようになると、政治家のようになってしまったが、やっぱり何年たっても天使は天使。アグネスはアグネスである。