日本レスリングの新たな〝顔〟が決定した。1日に開かれた日本レスリング協会の定例理事会で、既報通り福田富昭氏(79)が会長職を勇退。1984年ロス五輪金メダルの富山英明副会長(63)が新会長に選任された。18年間にわたり会長を務めた福田氏からバトンを受け継いだ富山氏は「偉大な方の後なので自信はないのですが、若い力を結集して前に向かうしかない」と正直な気持ちを述べた。

 持ち前の行動力で、女子五輪種目入りなどを実現させてきた福田前会長のイズムを全身で浴びてきた。富山氏の名前が一躍有名になったのは「カメラ持ち込み事件」。ロス五輪当時の日本選手団は規律にうるさく、入場行進でのカメラ持ち込みなどもってのほか。しかし富山氏ら複数の選手は「思い出に」とポケットに忍ばせたが、なぜか富山氏だけが通報された。

 選手団本部へ出向いて謝罪し、一度は許されたにもかかわらず「富山、強制送還」の報道で日本中が大騒ぎになった。この際、「考え方が古すぎる!」「約束が違う」と選手団本部に食ってかかったのがレスリングフリー監督だった福田氏。富山氏は無事出場し金メダルを獲得した。自分のために戦う福田氏の姿に「この人は絶対に日本スポーツ界を引っ張る人になる」と慕い、今に至る。

 富山氏はロス五輪後に出した自伝「夢を喰う」の表紙でメダルをかんでおり、スポーツ選手のメダルかみ第1号とも言われている。明るさと社交性で顔が広く、大相撲の元横綱白鵬の間垣親方や、サッカー元日本代表監督の岡田武史氏など、スポーツ界に多くの友人がいる。

「福田会長のカリスマ性や能力はまねできないかもしれないが、その優しさ、気配りは私も取り入れたい。みんなの力を結集して、新しい時代の協会をつくっていきたい」と話す富山新会長。新時代の日本レスリングを築いていく。