【泌尿器科医・高橋亮 シモの話】今回は梅毒シリーズ最終回、治療についてです。梅毒の治療は単純です。ペニシリンを1~2か月内服すれば治ります。はい、以上です。…と、まあここで終わってしまっては、紙面がかなり

余ってしまいますので、もう少し詳しく説明いたします。

 まずはペニシリン投与についてなんですが、諸外国と違って日本では残念ながら注射薬が使用できません。よって内服していただくしかないのですが、これが結構大変です。1日3回、1か月間飲み続ける必要があります。今まで薬を飲む習慣がなかった方が、1日3回正確に薬を飲むのは至難の業です。大抵は何度か飲み忘れてしまいます。まあ、1~2回飲み忘れたところで治療に影響が出ることはないと思いますが、これを1か月続けるのはなかなか大変です。注射が認められれば、1回打つだけでいいので、楽なんですけどね。

 また、ペニシリンの飲み始めに発熱や湿疹が出てしまうことがあります。これは梅毒の菌が薬で大量に死滅することによって引き起こされるのですが、抗生剤を飲んだら熱が出るなどということは普通はないことですので、驚いて内服をやめてしまう方がいます。解熱剤の併用もできますので、内服はやめずに続けていただく必要があります。

 さあ、頑張って1か月間薬を飲み続けた後は、血液検査で治っているかを確認する必要があります。抗体価が8倍または16倍以下に下がっていればOKです。ただ、診断のところでも話しましたが、これは梅毒の菌を直接確認しているわけではないので、下がり方に個人差が見られます。なかなか下がりきらない方もいるので、6か月後、12か月後に再検査を受ける必要があります。どうしても忘れてしまいがちなのですが、できれば1年間は経過観察を受けていただきたいです。

 ☆たかはし・りょう 神奈川県出身。2003年日本医科大学卒業。日本泌尿器科学会指導医・専門医。日本医科大学付属病院嘱託医。ED、早漏、AGAなどをはじめ、前立腺がんなど泌尿器科にまつわる疾患全般を扱う動坂下泌尿器科クリニック(東京・文京区)院長。