「阿部効果」初日は不発――。逆転V3を目指す3位・巨人は、5日に首位・ヤクルトとの直接対決第1ラウンド(神宮)に臨み、阿部慎之助二軍監督(42)が作戦コーチとして今季初の一軍ベンチ入り。さっそく原辰徳監督(63)の隣で戦況を見守ったが、一歩及ばず2―3で敗れた。その差は6・5と広がり「そんなに早く効果は出ない」との声も上がった。


 1点を追う9回二死二、三塁。一打逆転の場面で打席に立った代打のウィーラーは、投ゴロに倒れた。チームの惜敗を見届けた原監督は、G党で埋まった三塁側スタンド前を通り、クラブハウスへと引き揚げた。

 追い上げるどころか6・5差に広がった。原監督は「そこはもう、現実は現実でしょうけれども、しかし明日のゲームという部分でしょうね。それにベストを尽くすということ」と前を向いた。

 この日の注目は合流初日の阿部コーチだった。試合中の定位置は原監督の斜め後ろ。同コーチは「役目が監督、ベンチのサインをコーチャーに送るというものなので、責任重大」と戸惑いながらも「ちゃんと監督の采配に僕が付いていくようにしないといけない」と表情を引き締めた。

 試合前練習では内野ノックを担当すると、打撃練習の合間には広岡、八百板ら二軍で鍛えた〝チルドレン〟たちに身ぶり手ぶりを交え、指導した。試合中、伝達役のかたわら、現役時代にバッテリーを組んだ桑田投手チーフコーチ補佐とベンチで熱心に議論を交わすなど、精力的だった。

 原監督は「(阿部コーチ昇格は)予定通りですね。アニキ分的なね、今のチームのね。そういう点ではわれわれにはない力があるわけだから」と青年コーチがチームへ与える起爆剤的な刺激を期待した。

 もちろん阿部コーチの加入ですぐに勝てるほど勝負は甘くない。原監督に近い球界関係者も「そんなすぐに効果は出ない。仮に阿部コーチに素晴らしい作戦能力があっても、戦力も把握できていない中、いきなりチームを勝たせることは難しい」と〝即効性〟を求めるのは酷と同情した。

 当の阿部コーチも「横からのアングルなんだけど、一軍の投手はやっぱりいいな。ヤクルトの投手もそうだし、ウチの投手も抑えだったり、ちょっと違うな。ピシーッと行くしな、追い込んでから。『どこ投げてんだよ~』っていう投げミスが少ないのが一軍」とレベルの違いを実感。まずは2年間を過ごした二軍とのギャップを埋めることから始める必要がある。

 それでもこの日は阿部コーチからキャプテンを継承した坂本、新人時代に捕手としてアドバイスを送った大城がそれぞれ適時打を放った。状況は限りなく厳しいが…。今後、日を追うごとに「阿部効果」が広がっていけばいいのだが。