スウェーデン・アカデミーは7日、2021年のノーベル文学賞を、タンザニアの作家アブドゥルラザク・グルナ氏に授与すると発表した。

 受賞理由は「植民地主義による影響と難民の運命への洞察力」。同氏は1948年、当時英国の植民地だったタンザニア・ザンジバル生まれ。60年代に難民として英国に移住した。毎年のようにブックメーカーに有力候補として名前を挙げられる村上春樹氏(72)は今年も受賞を逃した。

 村上氏が一期生として卒業した兵庫・西宮市立香櫨園小学校には、6年1組時代の同級生の頭井治男さんと内堀均さん、学校関係者、地域の人々ら約15人が集まった。

 同級生らは6年生時の担任だった小谷先生と同窓会を開き、村上氏の受賞を待ち望んできたが、小谷先生は15年に死去。その後も有志らが小学校に集まり発表の瞬間を見守ってきたが、昨年はコロナ禍もあり、駆けつけたのは頭井さんだけだった。今年は内堀さんも集まったが、残念ながら吉報は届かず。2人は「今年も『やっぱりな』という感じですかね。残念」「先生にいい報告をしたかったんだけど」とがっかりした。

 ノーベル賞受賞者の高齢化が指摘されるが、村上氏も72歳になった。今年のノーベル物理学賞に選ばれた真鍋淑郎さんは90歳での受賞だった。当然、同級生も年を重ねていくわけで、内堀さんは「2人取れたらええのに。僕ら素人には文学の流れはわからない。選ぶ人の好みもあるだろうし、AIが選んでくれたらね。そうしたらもっと早く取れるかもしれんね」と待ち続ける気持ちを吐露。

 昨年、「私もこの学校で7年。多くの先生が在籍しているうちにと言ってましたね…」と語っていた稲森義浩校長も今年の春に異動に。校長として村上氏の受賞を見ることはかなわなくなった。

 それでもなお、村上氏の受賞を多くの人が待ち望んでいる。

 新たに着任した平野直文校長は「生徒も楽しみにしている。いいように考えれば、楽しみがもう1年延びた」と前向きだ。

 内堀さんは「まだ続くということですし、こういう時期しか(同級生と)会うこともない。そういう力を彼が出してくれてることは助かります」と縁をつないでくれる村上氏の存在に感謝。頭井さんも「また来年。生きてる限りね」と笑顔で小学校を後にした。