人気ロールプレーイングゲーム「ドラゴンクエスト」(ドラクエ)シリーズやザ・ピーナッツ「恋のフーガ」、ヴィレッジ・シンガーズ「亜麻色の髪の乙女」などで知られる作曲家のすぎやまこういち(本名・椙山浩一)さんが9月30日、敗血症性ショックのため死去した。90歳だった。

◇  ◇  ◇

すぎやまさんはドラゴンクエストシリーズでゲーム音楽というジャンルを確立した。中でも、ゲーム、音楽とともにその地位を不動のものにしたのが、1988年発売の「ドラゴンクエストIII~そして伝説へ」だった。

88年3月7日発売の「交響組曲 ドラゴンクエストIII」は、シリーズ初めてNHK交響楽団のフルオーケストラが演奏。オリコンがすぎやまさんの訃報を受け発表したアルバム作品の記録では、シリーズのアルバムで最多となる累積売り上げ27・4万枚を記録している。88年の第30回レコード大賞では「I」「II」と合わせて「特別企画賞 新しい子供達の音楽のために」を受賞。「III」は89年、第3回日本ゴールドディスク大賞の「ベスト・アルバム・オブ・ザ・イヤー 企画部門」を受賞した。

楽曲も今なお人気が高いものばかり。東京オリンピック(五輪)で使用された代表曲ともいえるオープニングテーマは、この作品で完結するゲームのシナリオ「ロト」に合わせて、初めて「ロトのテーマ」と名付けられた。

フィールドを旅する際に流れる「冒険の旅」は、過去にトヨタ自動車「アクア」のCMで使用され、曲に合わせゲームの主人公4人と同色のアクアが中世風の城や森を旅する演出で注目された。

「戦闘のテーマ」は、激しいテンポの中にも勇猛で耳なじみの良いメロディーが同居し、高校野球の応援歌としても定番曲となっている。

ゲーム後半で伝説の不死鳥ラーミアに乗った場面で流れる「おおぞらをとぶ」は、管楽器とハープによる美しいメロディーでシリーズ史上屈指の名曲とされる。ラップやDJ素材としても多用され、ギタリスト高中正義もカバーした。

エンディング曲「そして伝説へ」も人気が高い。管楽器と弦楽器による壮大な楽曲で、鴻上尚史氏による歌詞付きバージョンが発表されたことも。テレビ番組のエンディング演出などでも多く使われている。

発表されたのは、ちょうど時代が昭和から平成に移るタイミング。時代の変化を象徴するように、すぎやまさんのゲーム音楽、そして日本のゲーム文化そのものが「そして伝説へ」と向かった名盤だった。