しゃべりながらマジックを繰り広げるコミックマジックの第一人者のゼンジー北京(81)が9日、「第24回上方演芸の殿堂入り」名人を受賞し、大阪府庁公館で行われた表彰式に出席した。

 同賞は上方演芸の発展と振興に特に大きな役割を果たし、広く府民に愛され、後進の目標となる演芸人に与えられるもの。ゼンジーは手品に「タネモシカケモ、チョトアルヨ」と、カタコトの軽妙な話芸を加えることで、奇術を客と一緒に楽しむというポピュラーな形にしたことが高く評価された。過去には横山エンタツ・花菱アチャコ、桂米朝など上方芸能を代表するそうそうたる顔ぶれが受賞しているが、手品師の受賞はゼンジーが初めてだ。

 ゼンジーは受賞について「なんとなくカタコトが身についてしまってるけど、今日はマジメに。栄誉ある賞でありがたい」と笑顔をみせた。

 20歳を前にゼンジー中村に弟子入り。最初はタキシードを着て手品をしていたが、他者との違いを生み出すため、中国の服を着て、おしゃべりをしながら手品をする方向にかじを切った。

「最初はまともにしゃべれなかったが、何とか誤魔化せてしゃべれるものはないかいなと始めたのが、片言の日本語でしゃべるというもの。口から出まかせでしたが、おしゃべりで高座をやらしてもらってるうちにお客さんが喜んでくれて、それをギャグにして一つの形にして、今まできた」と振り返った。

 そんなゼンジーも、コロナ禍で仕事の依頼が減少したそうで「コロナで仕事もなくなって『ええ機会や』と引退しました。落ち着いたらボランティアで手品やろうかなと思ってます」

 まさかの〝引退宣言〟に報道陣もザワついたが、その真意を確かめると「そのつもりやけど、もしかしたら、まだやってるかもしれへん」と笑った。

 関係者によると、コロナ禍や年齢もあって、仕事をセーブしてきたが、まだまだ頑張ってもらう予定だという。

 さまざまな手品で人々を手玉に取ってきたゼンジーだけに〝引退宣言〟もネタの一つ?