放送中のNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」にはまっています。今週(15~19日)は怒涛(どとう)の展開に、涙腺が緩む日が続きました。

安子役の上白石萌音のナチュラルな笑顔、稔役のSixTONES松村北斗の戦前の好青年ぶりがいいのはもちろんですが、今週は安子の父金太を演じる甲本雅裕(56)、稔の父千吉役の段田安則(64)の2人の演技が際立っていました。

16日放送回で、安子との交際を両親に反対され、縁談話が持ち上がった稔が安子に会いに来たものの、金太に気づかれると、その場を立ち去ろうとします。後を追いかけた金太は稔に言います。「会うてやってください。それが一時、安子を苦しめることになっても」と言い、「お願いします」と頭を下げる。娘の思いを知る父の精いっぱいの思いやりが胸に迫りました。

18日放送回では、稔と安子の交際を応援する勇(村上虹郎)に説得されて、千吉は安子の実家の和菓子屋「たちばな」を訪れる。稔の父とは知らない安子ですが、祖父の初七日に用意したお汁粉を振る舞う。その気遣いに心動いた千吉の前に金太が姿を見せる。千吉が稔の父と気付いた金太は、勘当した長男が出征する時に見送らなかった後悔を口にして、「どうぞ悔いのないように息子さんを送り出されてください」と話しかける。戦時中という状況下にあって、子を思う父親同士の気持ちが交錯し、目頭が熱くなりました。

甲本も段田も演劇界出身で、若い頃から2人の舞台を見てきました。甲本は三谷幸喜率いる「東京サンシャインボーイズ」に所属し、1994年の劇団の活動休止まで中心メンバーとして活動しました。以降、映画やドラマで貴重な脇役として活躍しています。ちなみに、ドラマの舞台となる岡山県出身で、兄は元ザ・ブルーハーツのミュージシャン甲本ヒロトです。

段田は野田秀樹が主宰する劇団「夢の遊眠社」に81年に入団し、92年の解散まで中心メンバーとして活動しました。04年に森光子さんと共演した舞台「おもろい女」で菊田一夫演劇賞を受賞するなど、数々のドラマ、舞台で活躍する一方、最近は舞台演出も手掛けています。

19日放送回では、結婚して出征前に束(つか)の間の幸せな新婚生活を送る安子と稔ですが、22日放送回以降の展開が気になります。45年8月の終戦まで、戦況は厳しさを増していきます。2人の運命はどうなるのか。父親たちは2人をどう支えていくのか。これ以上、涙腺を緩めないでほしいと願うばかりです。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)