五輪の〝悪役コンビ〟が席巻した。世相を反映して世の中に広まった言葉に贈られる「ユーキャン新語・流行語大賞」の発表および授賞式が1日、都内で行われ、今夏の東京オリパラにちなんだワード「ぼったくり男爵」「ジェンダー平等」「ゴン攻め/ビッタビタ」「スギムライジング」の4語がトップテン入りした。

 これまで五輪イヤーと言えば、アスリートの感動のコメントなどが数多く受賞してきた。しかし、今年は新型コロナウイルス禍で1年延期という未曽有の事態。それに加えて開幕前は主催者の国際オリンピック委員会(IOC)、大会組織委員会の対応を巡って批判が相次ぎ、度重なる不祥事が起きたことも記憶に新しい。その象徴的な言葉が「ぼったくり男爵」だ。

 IOCのトーマス・バッハ会長は東京都に発出された緊急事態宣言について「東京五輪とは関係ない」と発言。海外からも大反発を受け、米ワシントンポスト紙は「IOCは商業主義で日本を踏み台している」と指摘した上で「Baron Von Ripper―off」と表し、その和訳の〝ぼったくり男爵〟という悪名が広く知れ渡った。選考した同大賞事務局は「元祖オリンピックのクーベルタン男爵がこれを見たら何というのだろうか」としている。

 一方、日本側の悪役の一人、組織委の森喜朗前会長の発言が発端となった「ジェンダー平等」もトップテンに入った。今年2月の日本オリンピック委員会(JOC)の評議会で、森前会長は「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と〝女性蔑視〟とも受け取れる言葉を発し、世界中から大バッシング。これが引き金となって会長を辞任すると、世の中には「ジェンダー平等」「多様性と調和」の空気が出来上がった。その後、女性の橋本聖子氏が会長に就いたのも〝森発言〟の流れによるものだった。

 今回、五輪パラリンピックのワードではスケートボート解説者の瀬尻稜氏がテレビ中継で発した「ゴン攻め/ビッタビタ」、パラリンピックのボッチャ日本代表の杉村英孝にちなんだ「スギムライジング」が明るい言葉。選考委員のやくみつる氏は「今夏は東京オリ・パラもスッタモンダの末に開催されたことだし、そちらの方から印象深かった言葉を引き上げた」としているが、やはりバッハ会長、森氏の〝負のイメージ〟が先行してした感が否めない。

 なお、年間大賞には米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平投手(27)にちなんだ「リアル二刀流/ショータイム」が輝いた。