16年「君の名は。」、19年「天気の子」で知られる新海誠監督(48)が15日、都内で会見を開き、3年ぶりの新作として「すずめの戸締まり」を製作し、22年秋に公開すると発表した。質疑応答の中で、製作中に全世界が見舞われたコロナ禍が、作品作りに影響を与えたかと聞かれた新海監督は、コロナ禍そのものは描いておらず、キャラクターも、ほぼマスクをしていないことを明らかにした。

新海監督は会見の中で、20年1月から企画開発を始めた後にコロナ禍に陥り、同4月から6月まで行った脚本の執筆を含め「企画を考えて、外に出ずコンテを描いた」と振り返った。さらに、自宅で外を見た際「寂しい風景が見えてきた。かつて人が歩いていた風景は、寂しくなった。(首都圏で)ここまで人がいない、がらんどう…。未来を見ているような風景になってきた」とも語った。

質疑応答の中で、コロナ禍が作品や、創作する過程での自身の考え方、精神に影響を与えたかと質問が出た。新海監督は「やっぱり…難しい問題。映画に関して言えば単純に、どういう環境で上映できるか分からないですし。コロナ禍そのものを舞台にしたとしても、公開される時期がずれますので、キャラクターにマスクをすべきか、すべきじゃないかにも、すいぶん迷いましたし…」と語った。その上で「迷った結果『すずめの戸締まり』の世界では、コロナを連想させるような部分は、なくはないですが、コロナそのものは描くことはしておりません。キャラクターは、ほとんどマスクをしていないです」と断言した。

そして「作っている最中の願いのようなものは、込めていると思います」と続けた。「2年間、部屋にこもって脚本とコンテを描いたと言いましたけれど、出来ればロードムービーなんだから、各地に行って、その場所に泊まって、空気を吸いながら書きたかった。でも、それは今は出来ない」とコロナ禍での製作を改めて振り返った。その上で「けれど、公開される頃には、そういうことが当たり前に出来るようになっていればいいなという、渇望のようなものがフィルムに込められていると思う。それが、お客さんに届けばと、うれしい思いました」と笑みを浮かべた。

また、日本各地の廃虚が舞台となることから、過疎地や災害の被災地も舞台になるのか? と質問が出た。新海監督は「扉が開いてしまって、そこが災害の元になるという設定がありますので、人が住まなくなってしまった被災地のような場所は出てきます」と答えた。その上で

「人のいなくなってしまった、寂しい場所に扉が開くんだ」

というセリフがあることを明かした上で「そういうテイストのある作品です」と締めた。