【浜口京子 気合でGO!(前編)】浜口京子(43)が思いのままを語る「気合でGO!」。今回は東京スポーツ新聞社制定「2021年度プロレス大賞」最優秀選手賞(MVP)を受賞した新日本プロレスでIWGP世界ヘビー級王者の鷹木信悟(39)と、女子プロレス大賞に輝いたスターダムのワールド王者・林下詩美(23)を特別ゲストに迎え、浜口道場で京子との〝世界チャンピオン〟トークをお届けする。道場出身の鷹木とは思い出話に花を咲かせ、同じ〝名物ダディ〟を持つ詩美には深く共感。絢爛豪華な「京子の部屋」の始まりだ。

 京子 こんにちは~。ようこそ、道場へ! お二人とも、受賞、おめでとうございます。林下選手、スタミナがあって、技も豊富。ずっと動いて最後まで攻め続けている。見ていて、心臓がドキドキします。かっこいいですね~。首が太いですね~。体格も良い。練習のたまものですね。

 詩美 ありがとうございます。親のおかげで体格は恵まれています。

 京子 鷹木君は道場で一緒に練習させてもらった。今はプロレス界のチョモランマのてっぺんにいる。世界最高峰。私からはもう見えないよ。

 鷹木 チョモランマ! ありがとうございます。俺は2001年くらいから通ったので、04年アテネ五輪に向け、内藤哲也とかと京子さんのスパーリングの相手をさせてもらった。俺は柔道をやっていたのに、女性にポンポンひっくり返されて衝撃でした。タックル決められ、バックとられて、回されて…。

 京子 あの頃の私、ピリピリしてたでしょ。ストレス発散の仕方が難しかった。17歳でレスリングの全日本(選手権)で優勝すると、負ける怖さも出てきて。

 鷹木 練習中の緊張感と終わってからの優しさのギャップが、さすが世界を取る人だと思っていました。守る難しさはわれわれも同じですね。王者になるまでは意気揚々だが、守る時は重圧がある。

 詩美 デビューから勢いで来てベルトも取ったが、最高峰にいなくてはいけないプレッシャー、すごく共感します。

 京子 気持ち的につらい時があったりしますか?

 詩美 試合前とか王者の重圧はありますが、家族が近くにいるので、ストレスを感じずに生活できています。プロレスラーの林下詩美として頑張り、三女の林下詩美として家族に癒やしてもらって、(平穏を)保っている感じです。

 ――お互い注目のパパの娘さんだ。アニマルパパの印象は?

 詩美 パワーの塊みたいな方。パワフルで元気があって。私が柔道していた時の父みたいです。父はプロレスのことは何も言わないが、柔道の時は大会が終わって家に帰ると、技など柔道の話をずっとしていました。

 京子 うちのダディと共通点がありますね。

 鷹木 ダディ!(笑い)有名人をパパに持つとどんな感じなんだろう。

 詩美 デビュー当時は自分がどれだけ頑張っても〝ビッグダディの娘〟としか見られないのが気になった。でも最近は〝林下詩美の父がビッグダディ〟となってきている気がしています。

 鷹木 京子さんはボディービルとレスリングのどっちが先でしたっけ?

 京子 最初がボディービル。13歳で初めて父にプロレスラーになりたいと打ち明けた。筋力トレーニングを始めたら、父が2か月でボディービルの大会に申し込んで。特別賞をいただき、人生で初めてステージ上でトロフィーをもらったんです。その時、自分も挑戦すればお客さんに称賛されるんだと、感じることができた。お二人も大活躍の1年で同じように転機になる瞬間はありました?

 鷹木 今年前半は負けが印象的な展開。この時に思い出したのが浜口会長の「負けは恥じゃない。負けて立ち上がれないことが恥だ」って言葉。負けに必ず学びがあるから、そこからどう這い上がるかが大事だと思っていた。そこからタメを作って飛ぶことができた。

 詩美 今年の途中に、最高峰のベルトなのに試合がセミ(ファイナル)になることが2回あって自信をなくしたんです。ショックは大きかったんですが折れないで、私は私らしく試合をしようと続けて、自信を持てるようになった。

 京子 誰かに相談しましたか?

 詩美 自分は悩みがあったらすぐ父に話すんです。すぐ泣くタイプなんで、泣きながら「セミになっちゃった。私じゃだめなのかな」と。その時、父に「そんな考えを持っているヤツじゃだめだろうな」と言われて、考えを変えました。

 鷹木 ズバリ言われた。

 京子 心を吐き出せ、受け入れてくれる存在はありがたいですよね。自分の殻に閉じこもったらいい練習はできない。私も「こう思う」と言えば、父が「こうだ」と返してキャッチボールになる。そうするといい練習になる。

 鷹木 トップに立つと、アドバイスしてくれる人がいなくなる。弱音も吐けなくなるからね。お父さんは、ちゃんと目が届くんだろうな。

 詩美 (周囲を見回し)こちらの道場には、たくさんパワーをもらえる言葉が書いてあって、いるだけで元気をもらえますね。気持ちがたかぶれる場所。あれはなんて読むんですか?

 京子 「呑宙の氣(どんちゅうのき)」ね。宇宙を飲み込むくらいの「氣」ね。

 鷹木 気合の気って中が締める(〆)でしょ。本当は米(※)を腹にためる漢字のほうが正しいらしい。浜口会長に聞いたわけではないけど。

 京子 鷹木君はすごいね。記憶力もいい。「負けは恥じゃない…」も覚えてた。

 鷹木 前のジムの、サンドバッグの裏に書いてあったじゃないですか。言霊(ことだま)を見て、練習後のストレッチとかで、自分の心に残るのを頭にインプットしていました。

 京子 うれしいね。では、せっかくジャージーなので、道場で少し体を動かしてみましょうか! オイ!

 鷹木&詩美 は、はい!

 ☆たかぎ・しんご 1982年11月21日生まれ、山梨・中央市出身。浜口道場を経て2004年、ドラゴンゲートでデビュー。18年10月7日に退団し翌日、新日本プロレス両国大会でロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンに電撃加入。IWGPジュニアタッグ王座、NEVER無差別級王座などを獲得。今年6月、オカダ・カズチカを下し第3代IWGP世界ヘビー級王座に輝いた。来年1月4日東京ドーム大会でオカダとV4戦で激突。178センチ、100キロ。

 ☆はやしした・うたみ 1998年9月14日生まれ。鹿児島・奄美市出身。テレビ朝日系「痛快! ビッグダディ」でビッグダディこと林下清志氏の三女として幼少期から注目を集める。柔道を始め中学2年で香川県大会女子57キロ級2位。2018年8月にスターダムでデビューし、同年度プロレス大賞新人賞。19年にゴッデス王座など4冠王に君臨。昨年11月に岩谷麻優を下してワールド・オブ・スターダム王座を奪取。29日両国国技館大会で朱里とV10戦で激突する。166センチ、65キロ。