カムカムエヴリバディ:100年の物語をつなぐ楽曲「On the Sunny Side of the Street」とは? 音楽担当・金子隆博が解説

NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のビジュアル (C)NHK
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NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のビジュアル (C)NHK

 上白石萌音さん、深津絵里さん、川栄李奈さんが主演するNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「カムカムエヴリバディ」(総合、月~土曜午前8時ほか)。祖母、母、娘の3世代親子による100年の物語をつなぐ重要な鍵の一つとして、劇中にはジャズのスタンダードナンバーとして知られる「On the Sunny Side of the Street(オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート)」が、何度も登場してきた。初代ヒロインの安子(上白石さん)と夫・稔(松村北斗さん)の思い出の曲であり、2人の娘・るい(深津さん)や周囲の登場人物にも大きな影響を与える同曲について、ドラマの音楽を担当する「米米CLUB」の金子隆博さんに解説してもらった。

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 ◇楽曲は世界恐慌真っ只中に誕生

 ドラマでは印象的な場面で流れることも多い「On the Sunny Side of the Street」だが、ジャズに詳しくない人には、あまりなじみのない楽曲といっても差し支えないだろう。金子さんは同楽曲について「1930年に、ブロードウェーの舞台用に作られた曲です」と解説する。

 「安子は1925年3月22日生まれなので、安子が5歳のときに作られたことになりますね。時代は世界恐慌(1929~1930年)の最中で、この曲の『ひなたの道(On the Sunny Side of the Street)』という歌詞は、その暗い世風をエンターテインメントで吹き飛ばしたいという思いもあったようです。今のコロナ禍に対してのドラマ『カムカムエヴリバディ』のような存在だと思いませんか?」。

 同楽曲はヒロインたちをつなぐ重要な鍵となる。このコンセプトを聞かされた際、金子さんは「ジャズって、どちらかというと『夜』のイメージありますよね? 朝からジャズスタンダードが流れるとは! これは、革命的な出来事になるぞ! と思いました。何しろ、音楽に興味がない方々が、朝からジャズを耳にするわけですから」と驚きを語った。

 ◇ライブの編曲、こだわりは?

 楽曲は、ヒロインたちだけではなく、物語を彩る周囲の人々にも大きな影響を与えている。印象的だった場面として、12月10日放送の第30回で、ジャズ喫茶店「Dippermouth Blues」のマスター・定一を演じた世良公則さんが、将校クラブで歌ったライブシーンを思い出す視聴者も多いだろう。

 金子さんは、ライブシーンで流れた「On the Sunny Side of the Street」の編曲も担当した。アップテンポなリズムが印象的だったが、「『On the Sunny Side of the Street』は、ジャズのスタンダード曲の中でも珍しい、メロディーが曖昧な曲です。ルイ・アームストロングが歌うメロディーラインと、バックのサックスが吹くメロディーが違うのです」という。

 アレンジのこだわりは「世良さん扮(ふん)する定一は、劇中で何度も流れるルイ・アームストロングのバージョンしか聴いたことがないはずですので、基本は、ルイのバージョンのメロディーを完全にコピーしてくださいとお願いしました。演奏も、ルイのバージョンをベースに、パーティーらしいハイテンションなバージョンに仕上げました」と明かしていた。

 ◇コロナ禍の作曲「皆で楽しめる曲を」

 金子さんは、ドラマのメインテーマも作曲した。

「『カムカムエヴリバディ』のメインテーマの作曲の製作期間と、このコロナ禍が、ちょうど同時期でした。あの時期、世界中の作曲家が考えたことだろうと思います。『コロナ禍が明けたら、皆で楽しめる曲を作りたい』と。つまり、ドラマ『カムカムエヴリバディ』のために作った曲であり、広い意味、コロナ禍で疲弊してしまった皆さんに向けて作った曲でもあります」

 今作で流れる音楽への思いを「今から思い起こせば、もしかしたら自分のために作った曲でもあるのかもありません。私たちは、全世界的に、同じ体験をしたわけですので」としみじみと語る。

 物語を華やかにするジャズサウンドは、金子さんが作曲・プロデュースした、二つのオリジナル・サウンドトラックでも楽しむことができる。「こだわり的には、音楽も時代考証に沿っているという部分です。1925年に安子が生まれるところから始まり現代へ。この100年の物語は、年代的に、ジャズが生まれ、発展し、形を変えながら、現代に力強く愛されている音楽の歴史でもあります」と語っていた。

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