コメディアン、ぜんじろう(53)が、スタンダップコメディーの普及にまい進している。16年に「日本スタンダップコメディ協会」を立ち上げて副会長を務める。90年代前半に「平成の明石家さんま」としてブレーク、そしてスタンダップコメディーの旗手となるまでの歩みを聞いた。

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ネット時代を迎えて、スタンダップコメディーもYouTubeなどで発信しやすい時代になった。

「発信しやすい分、単にしゃべっただけじゃ駄目。それを整理して、作品にして出すわけじゃないですか。居酒屋で2時間しゃべってることを、15分に考え方をまとめてしゃべる。普通のしゃべりやん、てとらえられるのか、もしくは考え方聞きたいとなるかなんですけどね。まだまだ、その人の考え方を聞きたいというまで、お客さんがなってきていない。何人かはいるでしょうけど、そこを今、慣らしていってる作業ですね」

コロナ禍の2年間、ユーチューバーの存在が大きくなった。自身もYouTubeチャンネル「The Daily Zenjiro Show」で毎日のように配信をしている。

「ユーチューバーの中でも、僕が見てたらスタンダップコメディーっぽい人もいるんです。ユーチューバーっていう言葉が、すごく認知されたじゃないですか。やっぱり経済がすごく動いたやからと思うんですよ、お金がもうかった。スタンダップコメディーというものを、根付かそうと思っている。人の考え方を聞くやつもいるし、普通にしゃべるってるやんと言うやつもいる。下ネタ、大人の話を、ちょっと酒飲みながら見たったらいいんですよ。芸人も救われると思う。漫才とかは、なかなかずっとやってられないんですよ、コントも。体が動かなくなるでしょ。楽屋じゃ、芸人も堅いこともしゃべりますよ。政治のこととか、子育てどうとか。漫才やったらアホせなあかんでしょ。普段しゃべってることと、ちゃうことを。普段しゃべってることはラジオで。でも今のご時世だとラジオでもできないでしょ」

スタンダップコメディーは、新しい可能性を開くジャンルだと言う。

「スタンダップコメディーというジャンルがあったら、落語みたいにみんなが食って行けると思うんですよ。どんなスタンダップやってるんやろうかとか興味を持ってもらってね。でも、演じるコメディークラブもないし、それもだんだんとできていったらいいなと思う。そういうジャンルをやり続けていくことによって確立していく。落語でもない、漫才でもないものを」

かつて若者に見向きもされなくなりかけた落語は、ブームを経て人気を盛り返した。

「落語は宮藤官九郎が、TBS(系ドラマ)『タイガー&ドラゴン』(05年)を書いたのが大きかったでしょうね。運もあったんでしょう。面白いのは(立川)談志師匠は落語をやりながら、落語界、落語を否定しながらやりはった。そしてスタンダップをやっていた。(春風亭)昇太師匠はスタンダップに出てもらったことがあるんですよ、面白いと思ったんで。談志師匠みたいに『落語っていうのは、こうでよ』とかは言わない。落語家っていうのは、どちらかって言うとちょっと抜けてないと駄目なんだ、与太郎じゃなきゃと。『あんなことを言う談志師匠は与太郎じゃないよ』っていう昇太師匠を面白いなと。そういうのがあってやっていくのはいいんですけど、日本の人は自分を隠して生きていると思う。本当は自分自身の主義主張があるのに。だから、ネットがすごいじゃないですか。漫才師でも落語家でも、そこからこぼれた人から、スタンダップをやれる人が出てきたらいいなと思います」(続く)

◆ぜんじろう 1968年(昭43)1月30日、兵庫県姫路市生まれ。大阪芸大芸術学部デザイン学科中退。87年に上岡龍太郎に入門、吉本興業に所属。88年に月亭かなめとの漫才コンビ、かなめ・ぜんじろう結成。同年、今宮子供えびすマンザイ新人コンクールで福笑い大賞。89年にABCお笑いグランプリで最優秀新人賞、上方漫才大賞新人奨励賞を受賞したが解散してピン芸人に。92年、毎日放送「テレビのツボ」司会でブレーク。95年「超天才・たけしの元気が出るテレビ!!」。98年渡米。01年帰国。170センチ、57キロ。