和歌山競輪GⅢ「開設72周年記念」(和歌山グランプリ)は9日、初日を行った。初日メインの特選12Rは手に汗にぎるデッドヒート。特に見せ場をつくったのは昨年末の静岡「KEIRINグランプリ2021」でも激闘を演じたS級S班の面々だ。

 レースを制した郡司浩平(31=神奈川)は勘所を押さえた巧みな位置取りで先手の3番手をキープ。「せっかく取ったあの位置は譲れない」と古性優作(30=大阪)が鐘過ぎ8番手カマシで応酬してきてもホームで注文を付け、2角では内からドカして古性を不発に追いやった。

 佐藤慎太郎(45=福島)もフル回転。前を任せた長島大介(32=栃木)が先行すると、執ように古性に絡まれたが、そのつど丁寧にいなし、長島を4角までノビノビと駆けさせた。

「長島はペースで踏んでいい先行だった。それにしても、初日特選はスキがないね。自力が一気にみんな来る。今日はいい意味で刺激が入るレースだったよ」と正月モードが一挙に吹き飛ぶ激戦に、マーク屋稼業に生きる男はうなずいた。

 新年早々、先輩SS班たちの洗礼を浴びた〝王者〟古性は「地元の東口(善朋・42=和歌山)さんが付いていたし最終バックを取るぐらいのつもりだった。力勝負した結果、自力で負けました」と潔く完敗を認めた。とはいえ、信念を貫く度胸駆けには、相当な覚悟とこの先の方向性を感じさせた。

 松浦悠士(31=広島)は立ち遅れ「前の動きに付き合ってしまった…。行くなら1センターでしたね」と悔やんだが、松浦には何よりもSS班の威圧感が備わっている。だから郡司は松浦に気を払った位置取りを意識し、古性は前にいる松浦を過度に警戒するゆえ、早めにカマしたと思われる。

 SS班たちの絶妙な駆け引きが、結果的に好勝負を生んだ。最後に勝者の郡司が笑いながら振り返る。「これだけのメンバーでやれて楽しいです。初日は僕もだいぶ刺激を受けたし。でも、こんなレースが毎回だったら…疲れますよ(笑い)」