【取材の裏側 現場ノート】全国高校サッカー選手権で青森山田が存在感を見せている。J1のFC東京に内定しているU―22日本代表MF松木玖生(3年)などを擁してインターハイ、プレミアリーグEASTを制し、今年度も高校サッカー界をけん引している。 

 群雄割拠の中、なぜ毎年のように圧倒的な強さを見せられるのか。スカウティングや練習施設の充実などに加え、そこには黒田剛監督(51)の独自の〝育成論〟がある。「性格も含めてスキルなので、人間性は重視する。選手である前に、ひとりの人間としての土台を作っていかなければ、選手としては必ず行きづまるし、乗り越えられない」と黒田監督はその信念を語ってくれたことがある。

 その上で重要になってくるのは、どうやって人間性を磨くのかだ。「礼に始まり礼に終わる。あいさつは大切なバロメーター。周囲に感謝の気持ちを持つことや、身の回りを常にきれいにするとか、単純なことだけどそんな教えの中から導いていく」。昔ながらの人間教育ではあるが、そこに強さの秘訣が隠されている。

「今の時代に、格好悪いな、面倒くさいなと思うことをやることの〝格好良さ〟を教えていかないと。エリート集団を集めただけでは勝てない。指導者には、子供たちの人生に関わっている責任がある。ストレスのない人生は推奨すべきではない」と名将は力説する。

 どんな社会でも通用する〝人間力〟が常勝軍団の礎になっている。(サッカー担当・渡辺卓幸)