キプロス大学のレオンディオス・コストリキス教授が、新型コロナウイルスのデルタ株とオミクロン株の特徴を併せ持つ混合ウイルス「デルタクロン株」を発見したと発表したことで、世界中が驚きに包まれている。毒性が強いデルタ株と感染力が強いオミクロン株の結合とはまるでSF映画のようだが、それだけではない。インフルエンザとコロナに同時に感染する「フルロナ」なる造語まで生まれているという。果たして大丈夫なのか?

 デルタ株とオミクロン株が合体してデルタクロン株!? まるで冗談のようなネーミングセンスだが、地中海に浮かぶ島国・キプロスの大学教授が、大まじめにデルタ株とオミクロン株の特徴を持ったデルタクロン株を検出したと発表した。

 この教授によれば、デルタクロン株と見られる事例を25件発見したといい、追加調査のため、すでに塩基配列を外部機関に送ったという。今のところ、毒性や感染力の高さについては分かっていない。

 このニュースに世界は騒然。世界中で多くの人を死に至らしめたデルタ株と、驚異的な感染力の高さを見せるオミクロン株の特徴を持った混合ウイルスとあって、「重症化リスクも感染力も高い変異ウイルスが発生か」と話題になっているのだ。

 一部の研究者から「実験プロセス中の汚染による人為的ミス」と指摘する声も上がっているが、同教授はいくつかの証拠を提示して人為的ミスを否定している。

 果たして2つの変異株が結合して、新たな混合ウイルスが誕生することはあるのか? 医学博士で防災・危機管理アドバイザーの古本尚樹氏はこう話す。

「2つのウイルスが結合することは簡単には起こらないが、あり得ないことではない。今回のデルタクロン株の検出が人為的ミスによるかは定かではないが、実際にデルタ株とオミクロン株の特徴を持ったウイルスができたのなら大問題。意図して結合させたのでなければ、自然界でも十分にデルタクロン株が発生し得ることを意味する」

 これまでの新型コロナウイルスは、感染を繰り返すうちに増殖中のコピーミスを起こして変異株が生まれてきた。ただ新型コロナウイルスは、各変異株だけではなく中国・武漢のオリジナルも含めて、いまだに全容が解明されていない。それだけに変異を繰り返したことによって、変異株同士の結合により新たな変異株が発生しやすく“進化”している可能性も否定できないという。

 一方で、世界では「フルロナ」なる言葉も駆けめぐっている。インフルエンザの「フル」と新型コロナの「ロナ」を合わせた造語で、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスに同時感染することを意味する。すでにフルロナ患者は、イスラエル、ハンガリー、スペイン、ブラジルなどで報告されていたが、ここにきてついに米国でも報告例が上がった。

「どんな病気でもそうだが、合併症を伴うと厄介になる。同時に2つの治療を行うことになるので患者の体力の消耗は激しく、治るまでに時間がかかる。長期化すれば患者はさらに体力が低下。この負のスパイラルで重症化リスクと死亡率が高まってしまう」(古本氏)

 新型コロナの世界的流行で衛生意識が高まったことで、この2年ほどはインフルエンザの流行は抑えられてきた。その一方で集団免疫が落ちたため、ひとたび流行すれば重症化リスクを伴った世界的大流行の可能性があると指摘されている。現在は感染力が高いオミクロン株が流行しているだけに、フルロナへの注目度も高まっている状態だ。

 世界的に注目されているデルタクロン株にフルロナ――。これからの動向に注意したい。