今年は、男装アイドルがブレークしそうだ。この分野を切り開いてきた風男塾は結成から15年。ファン層もかつての男性中心から、現在は会場を埋めるのはほぼ女性ファンだ。風男塾に続き、アエル、BOPも次々とデビュー。3グループが合体したプロジェクト、ドリームボートでもCDリリースやライブ開催を行うなど、その活動範囲は広がる。今年の抱負を3グループの代表者に聞いた。

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昨年12月、都内のホールで、ドリームボートによる「#だんぱらフェス4」が開催された。風男塾、アエル、BOPの3グループが結集した、総勢15人によるライブ。一番の弟分でもあるBOPのお披露目でもあり、2公演とも会場は女性ファンを中心に満員だった。それぞれのグループでのパフォーマンスに加え、ドリームボートとしては15人が激しいダンスに口パクなしで歌唱する。狭いステージでのフォーメーションは、まさに日体大の集団行動のようだ。

ドリームボートをけん引するアエルの有光陽希は「3グループが集結すると、やはり勢いもでるし、華やかになりますね。3つのグループがあるので、男装という分野が1つのエンタメとして成り立っていると思います。それぞれのファン層も違うので、集まることでそのウイングを広げていけたらいいと思います」。

3グループはそれぞれの特色がある。アエルは楽曲はロックテイストでクールさやシックさ、かっこよさが売りだ。風男塾は元気さや泥くさが特徴で、BOPはダンスパフォーマンスに力を入れている。

風男塾の柚希関汰は「全員でのフォーメーションは頑張って覚えました。息が合わないとぶつかる。仲良くなればコミュニケーションも取れるので関係性が大事ですね」と話した。

ここ数年、ジェンダー平等の概念や認知も広がり、男装アイドルへの理解度も深まった。さまざまなアイドルが乱立する中、存在感も際立っている。有光は「男装は1つの個性で、ほかのアイドルができないものを確立できる。俺はそもそも、フリフリのアイドルになりたいと思ったことはなかったから」と振り返れば、BOPの翔咲心も「私服もズボン。フリフリは元々好まないし、男装することで違う自分になれる。アイドルが偶像的なものなので、理想になれる」と指摘した。オーディションを行えば多くの応募者がおり、研修生も抱えている。有光は「やりたいと思う子がいて、うれしく思う。憧れの1つとして成り立っているのでは」。

ファンは女性が多くなってきたことを前述したが、中でもアエルは女性ファンの比率が最も高いという。恋愛対象について聞くと、有光は「男性だろうが女性だろうが、ジェンダーは関係なく応援してほしい。有光陽希として恋愛するのはファンだけ。本当にそうです」。女性ファンということは、男性アイドルのファン層ともバッティングすると思われるが、翔咲は「男性がちょっと苦手な女性にも好きになってもらえるのでは」と語った。

ドリームボートは昨年12月にシングル「夢限大セイリング」を発売。今年も3グループが次々とシングルを発売するほか、「#だんぱらフェス」の開催も2回予定されている。有光は「男装の世界観をもっと広げたいと思います」と抱負を語った。【竹村章】

◆風男塾 07年9月から始動。当時は腐男塾。シングル28枚、アルバム7枚をリリース。アジアでもCDデビューしている。現メンバーは葉崎アラン(はざきあらん)偉舞喜雅(いぶきみやび)神那橙摩(かんなとうま)英城凛空(はなしろりく)紅竜真咲(くりゅうまさき)柚希関汰(ゆずきかんた)

◆ael-アエル-…(アエル) 19年7月、シングル「終わりなきラプソディ」でデビュー。セカンドシングルはオリコンチャート1位。現メンバーは碇たくみ(いかりたくみ)逢坂朔玖(あいさかさく)有光陽稀(ありみつはるき)雫月Lee(しずきりー)八雲杏(やぐもきょう)

◆BOP 王子様系男装ユニットEUPHORIAが昨年11月に活動終了。翔咲心(とさきこころ)海憧乙綺(かいどういつき)に、彩浪遥斗(あやなみはると)流雅真紗斗(りゅうがまさと)が加入。今年3月に初シングル「サヴァイバー」を発売。BOPははBest OverPoweredの略。