かつての恩師も太鼓判だ。大相撲初場所11日目(19日、東京・両国国技館)、幕内阿炎(27=錣山)が幕内逸ノ城(28=湊)をはたき込んで9勝目(2敗)。1敗でトップを走る横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)と関脇御嶽海(29=出羽海)を1差で追走し、優勝争いに食らいついている。

 昨年は新型コロナウイルス対策のガイドライン(不要不急の外出禁止)に違反して3場所出場停止となり、番付は幕下まで転落した。そこから這い上がり、今場所は幕内復帰2場所目。かつてのような立ち合いの変化も見せず、真っ向勝負を貫いている。

 阿炎が小、中学時代に通った草加相撲練修会で監督を務める常光弘泰氏は「(以前は)飛んだり跳ねたりだったが、今はハートのこもった押し相撲。つらい時期があった中で〝今のままじゃだめだ〟という気持ちもあったんだろう」と元教え子の成長に目を細める。

 その上で「(変化を封印すれば)相手は安心してぶつかってくる。でもそれを突破していこうということでは。それができるようになれば、大関になれると思う。それは本人も狙っているところ。本人の言う『師匠を超えたい』とは、そういうことだから」と大きな期待を寄せた。

 阿炎の最高位は小結で、師匠の錣山親方(元寺尾)は関脇として活躍した。いずれは、師匠が到達できなかった大関になることが最大の恩返し。そんな思いを胸の内に秘めながら、阿炎は真摯に相撲と向き合っている。「親方など、いろんな人に迷惑をかけただろうし、それを返すためには自分が勝っていくことだと思っているはず」(常光氏)

 今場所の成績次第で三役の地位が見えてくる阿炎は「まだ強くなりたい。一番一番に集中して取ることが、その近道だと思う」。押し相撲を極めて〝師匠超え〟を狙う。