15日に実施された大学入学共通テストの試験時間中に「世界史B」の問題を撮影した画像がインターネットアプリを通じて外部に送信された疑いがあることが26日、分かった。送信した疑いのある人物は、国語の問題も解答するよう依頼したという。インターネットが普及した結果、カンニングの手法も変わってしまったのは間違いないが、その背景を探った――。

 関係者によると、東大生を名乗る男性が、インターネット電話アプリ「スカイプ」を通じて、15日午前に行われた「地理歴史・公民」の世界史Bの画像を受け取ったとして試験後に入試センターなどに連絡した。男性は、家庭教師紹介サイトで知り合った人物とやりとりするようになり、試験中の時間に「試しに解いてほしい」などと依頼を受けたという。問題の画像を複数回受け取って解答を返信。その後、共通テストで実際に出題された問題だと気付き、不審に思って通報した。

 画像を送ったのは「高校2年の女子生徒」を名乗る人物。家庭教師登録サイトの利用者で、家庭教師採否の課題として解答を求めたようだ。大学入試センターと文部科学省は不正行為とみて事実確認を進めており、相談を受けた警視庁が偽計業務妨害容疑で捜査している。

 また15日午後にあった国語の試験前には、流出させたとみられる人物がインターネットアプリで「現代文をよろしくお願いします」とのメッセージを男性に送信。実際には問題は送られなかったという。

 サイト運営会社によると、問題流出にかかわった疑いがある人物は昨年12月初め、「高校2年生」を自称してサイトへ登録。複数の学生に連絡先を教えるよう求め、体験授業を受けたいと要望していた。

 入試センターによると、共通テスト中にスマートフォンやデジタル端末を使用すると失格になるため、かばんにしまうように注意喚起している。三重県の会場では15日、受験生1人が国語の試験中にスマホを太ももの間に隠し、カンニングと認定されて失格になった。入試センターは、この受験生については外部流出の形跡はないと説明している。

 予備校関係者は「受験産業全体がお客さま至上主義になり、有名塾の講師は生徒にアンケートで査定される時代。東大生も家庭教師マッチングサイトの見込み客に査定されるコマのひとつに過ぎません。客が課題を家庭教師に出して選抜する時代です。コロナ禍で、オンライン家庭教師が増えているので、東大生も利用された被害者です」と語る。

 また、盗撮に詳しい調査会社のスタッフはこう指摘する。

「フレームに盗撮カメラを内蔵したメガネ、ペン型の盗撮カメラが売られていますから、問題用紙を試験会場で撮影するのは可能です。通信機能が付属の盗撮カメラから送信したり、トイレに立った際にスマホに写していた画像を送信することができます」

 自ら受験生に交じって受験することもある予備校講師は、不正行為が行われた背景についてこう分析する。

「入試などの試験監督は予備校に比べて不慣れな人が多く、補助の試験監督も初めて試験監督をやるような日払いのアルバイトばかり。大教室ならスマホでの隠し撮りも可能でしょうね」

 1980年代に「ザ・カンニング」という映画がはやったが、デジタル時代のオンライン化は、遠隔不正行為も可能にしてしまったようだ。