俳優の高知東生(57)が31日、高知・南国市の県立高知農業高校で行われた「依存症の理解を深める特別授業in高知」にオンラインで出席した。

 厚生労働省が主催する同授業は、アルコールやギャンブル、薬物などの依存症に対する理解を深め差別や偏見をなくし、依存症の当事者や家族への適切な治療や支援に結びつけようという普及啓発事業の一環として行われたもの。高知県出身の高知が同校を訪れ、体験談を語る予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大のためオンラインでの出席となった。

 高知は2016年、クラブホステス(当時)と横浜市内のラブホテルに滞在中、覚醒剤取締法と大麻取締法の両違反容疑で逮捕され、懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年)の判決を受けた。

 生徒との質疑応答では、大麻の合法化に対する意見を聞かれ「基本的には反対。害は間違いなくあるから」と応じ、「できるなら刑罰より治療というのを叫びたい。社会でもう一度再起を図る中で、刑罰が重すぎる。再起の手助けができる社会になってほしい」と訴えた。

 薬物で逮捕され、「家族、仕事、人としての信用・信頼、すべてを失った」という高知が、薬物と出会ったのは高校を卒業し、上京した後のことだった。

「ディスコのVIPルームに同年代なのに世界が違う人たちがいた。田舎もんの俺がこういうところでネットワークをつかめば『東京で成り上がれる』と足を運んで仲良くなり、オシャレに薬物が回ってきた。薬物をやると非現実的なものになると思ったが、実際使うと何ともなかった。拍子抜けした。この程度ならいつでも止められると思った」

 しかし、そうはいかなかった。「VIPルームで時代の先端のやつらと仲間になれるという喜びもあって、どんどんのめりこんだ」と依存に陥った。

 依存の要因には家庭環境の影響もあったという。高知は幼少期を両親がいない環境で過ごした。死んだと聞かされていた母親が小学生の時に現れ、一緒に生活することになったが、高校3年の時に母親が自死するという複雑な環境で育った。

 そのため、「素直に感情が出せず、大人の顔色を見て過ごした。ありのまま会話ができず、大人になっても引きずった」そうで、ストレスがたまっても人に相談する癖がなく、自分で解決しようとして、どんどん薬物を使用するようになったという。

 そんな高知も逮捕後に依存症回復支援の自助グループと出会った。同じつらさを抱える仲間とともに回復に向けて取り組み「自分の考えに自信がなかったからクスリに走ったけど、自分が自分の味方という自己肯定感を持てるようになった。仲間と出会って生きやすくなった」と語った。

 そうした経験をもとに、「自分一人で抱え込まないこと。すべてをさらけ出して分かち合える、本当の友達というのを見つめ直してほしい」と高校生に向けアドバイスを送った。