キャンプの話題は譲ってもペナントレースを譲らなければ問題なし。楽天・石井一久GM兼監督(48)が「近隣の狂騒」をよそに、リーグ制覇に向けチームの底上げを図っている。

 楽天は沖縄県中部の金武でキャンプを張っている。昨年の同地は新型コロナ禍の影響で無観客も、8年ぶりに米メジャーから田中将が古巣復帰したこともあり日本中から注目を浴びた。だが、今季は車で30分ほどの距離にある名護の日本ハムに話題を独占され、楽天キャンプ地は静かそのもの。初日の観客数は81人、2日目も48人と人影はまばらだった。

 そんな「静寂な環境」を生かしてチーム作りを進めているのが指揮官2年目の石井監督。まず着手しているのは豪華先発陣のさらなる強化だ。

 楽天といえば、日米通算181勝の実績を誇る田中将を筆頭に昨季11勝の則本や10勝の滝中。そこに昨季9勝の左腕・早川やベテランの涌井、岸ら、そうそうたる先発投手が揃う。それでも指揮官はこの現状に甘んじることなく「豊富な先発? 決してそうではない」と断言。「つけ入るスキというのはあると思うので」と、今キャンプでは昨季中継ぎで5勝の西口を先発に挑戦させるなど強化の手を緩めない。

 外野陣も日本ハムから西川が加入したことで、昨季打点王の島内を中心に辰己、岡島など厚みも増したが、石井監督は「外野ってシ烈な争いだと思うので。いろんなフォーメーションをできればいいかなと思う」と淡々。ポジションを固定せず競争意識を植えつけているのだから他球団にしてみれば脅威だろう。

 昨季は田中将の加入もあってシーズン前はリーグ優勝候補に挙げられたものの、終わってみれば無念の3位。8年ぶりのリーグVと日本一を逃した。チームはその悔しさもあり、今季のスローガンを「譲らない!」に決定。覇権奪還に並々ならぬ意欲を燃やす。

 現時点で新庄監督率いる日本ハムに球界の話題を譲っていてもお構いなし。シーズンでの主役を譲らぬよう指揮官も選手も手はずを整えている。