【大倉明日香「Prime number~君と出会える日~」】

 鴨志田一のライトノベルを原作としたアニメ「さくら荘のペットな彼女」は、2012年から13年にかけて全24話が放送された。その2クール目のエンディングテーマとして流れたのが、大倉明日香の「Prime number~君と出会える日~」だった。

 さわやかで少し甘酸っぱさのあるメロディーとサウンド、当時まだ10代だった大倉明日香のまっすぐな歌唱、まさに“青春”という2文字が浮かんでくる良質のポップスだ。

 大倉明日香は「第5回全日本アニソングランプリ」(11年)のファイナリストとして注目され、13年にこの曲でデビューを果たす。しかし、発売されたシングルはこれ1曲だけだった。16年に配信限定のアルバムを発表しているが、それを合わせても大倉明日香名義の作品は極めて少ない。

 そして17年の秋。アニメ「Fate/Apocrypha」2クール目のエンディングで流れた「KOE」というエモーショナルでドラマチックなバラード曲。シンガーの名前を確認すると“ASCA”とある。これが実は、大倉明日香がレコード会社を移籍してスタートさせたソロプロジェクトだった。

 それからのASCAは、ビッグタイトルアニメのテーマソングを次々と歌い、西川貴教とのデュエット曲「天秤―Libra―」など幅広く活躍中。歌唱力にもさらに磨きがかかり、現在ではアニソン界のトップシンガーである。

 今のASCAなら、まず歌うことがなさそうな曲調の「Prime number」だが、大倉明日香唯一のシングルとして、ずっと記憶にとどめておきたいと思う。