表彰台が見えてきた。8日に首都体育館で行われた北京五輪フィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)で、鍵山優真(18=オリエンタルバイオ・星槎)が自己ベストの108・12点で2位発進。五輪2大会出場のプロフィギュアスケーター・鈴木明子氏(36)が若武者の〝すごさ〟を解析した。

 快進撃を続ける18歳は冒頭の4回転サルコーを着氷させると、4回転―3回転の連続トーループ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も成功。演技後には「(五輪は)楽しいですね。やっぱり楽しまなきゃ損。初めてなので、何事も楽しんでいきたいなっていう気持ちがある」と笑顔がはじけた。

 初の五輪の大舞台。重圧で実力を出しきれない選手もいる中、120%の力を発揮した。この勝負強さはどこから来るのか。鈴木氏は〝3つの要因〟を指摘する。

 まずは過密日程の中でも団体戦を経験したことだ。鍵山は6日の団体戦男子フリーで、今季世界最高得点となる208・94点を記録したばかり。中1日での個人戦だったものの、鈴木氏は「いいイメージのまま個人戦に挑めるというのはメリットだと思います。中途半端に日程が空く方が難しいので」。若武者らしく、場数を踏めば踏むほど成長を遂げている。

 メンタル面の強さも見逃せない。鍵山は五輪の夢舞台でも「緊張とかプレッシャーは全然ない」と言い切っている。鈴木氏はこの強心臓ぶりについて「しっかり練習を積み重ねてきたからこそ、今の実力で『五輪にチャレンジする』という気持ちにつながっていると思います。あとは挑戦者としてどんどん自己ベストを更新して、成長を喜んでいる点。その気持ちにつながっているのかなと見えました」。特有のポジティブさこそ大きな武器というわけだ。

 そしてジャンプ。これには五輪2大会出場の父・正和コーチから譲り受けたDNAと、親子鷹で磨き上げてきた努力の結晶が詰まっている。「ジャンプの着氷が非常に似ています。鍵山選手の持ち味は柔らかいヒザと足首の使い方なので、お父さま譲りですね。イメージ的には強くて柔らかいという感じです」と共通点を挙げ「本当にお手本のようなスピード、高さと着氷です」と絶賛した。

 フリーに向けて鍵山は「いつも通りやればそれなりの点数と結果はついてくる」。マイペースを貫いた先に栄光が待っている。