【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】「人を遺すを上とする」

 2020年2月11日に他界した野村克也さんの言葉だ。

 野村氏がかつて監督を務めた楽天には、そのイズムを色濃く受け継いだ人物がいる。

 野村ヤクルト時代、左腕エースとして活躍した石井一久監督(48)はもちろんだが、その側近の存在を忘れてはいけない。野村政権当時の一軍マネジャーであり、現在は石井監督を支える加古賢一チーム運営部長(44)がその人だ。

 野村氏が亡くなってもう2年。忙しい合間に声をかけると「こうして現場に出ていても忘れる事は絶対ないですよ。毎日(野村)監督のことは思い出しますね」と空を見上げた。

 加古部長は大学卒業後の02年、近鉄バファローズにブルペン捕手として入団。しかし、04年に球団が消滅し05年から楽天二軍マネジャーとなった。まさに、球団の歴史をゼロから経験し、キャリアを積み上げてきた。

 その中で野村監督の隣で過ごした日々は濃密だった。「確かに気を使う大変な仕事でした。でも、本当に勉強になったし、いい思い出しかない」と当時を振り返る。

「要は努力しろということです。生まれ持ってすごい人なんていませんしね。常に頑張れということだと思っています」と、今でも野村イズムを大切に日々の仕事にいそしんでいる。

 その加古部長から見た石井監督はどうか。野村氏との共通点を問うと、こんな言葉が返ってきた。
「野村監督は準備の大切さを説いてましたよね。石井監督も何をするにしても事前の準備が非常に細かいです。僕が思うに野村監督以上ですよ。ああ見えてね」

 現役時代はひょうひょうとしたイメージが強かった石井監督。指揮官となった現在は、名将のよきDNAを継承しチームを率いている模様だ。
 野村監督が遺した「人」が確かに楽天を支えている。

☆ようじ・ひでき 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。