あなたの話をお聞かせ下さい――。作家で僧侶の家田荘子氏が気になる人物に迫る「駆け込み寺」対談編。話すことで自身を見つめ直し、人生の学びを見いだす。今回は2005年から事故物件情報提供サイトを運営する大島てる氏がゲスト。大島氏がサイトを運営する理由について家田氏が迫った。また、なぜか事件、事故が連続して起こる〝いわつく付き物件〟の真相とは――。

 家田 なぜサイトをやろうと。

 大島 以前に不動産投資をしていて、ありとあらゆるアラ探しをするわけです。全部、承知のうえで安く買うのなら構わないんですけど、知らずにつかまされるのは避けたい。事故物件に関しての専門家がいなかったので、じゃあやるかと。

 家田 そもそも事故物件とは?

 大島 ひと言で言えば、人が亡くなった経歴のある不動産、取引の対象になる物件。

 家田 孤独死も入る?

 大島 そうですね。孤独死は事故物件にあらず、という立場もあるのは承知しています。みとられずに亡くなって、なぜ発覚するのかというと臭いです。悪臭、腐敗臭、死臭。私は死者の最後のメッセージと捉えている。「ここにいるんだぞ」と。孤独死のあった現場の方が、借りたり買ったりしたくない。そう思う方も大勢いらっしゃるでしょうから「言う必要がない」というのは無理がある。

 家田 孤独死は多い?

 大島 一番多いです。次が自殺。日本は治安がいいので殺人となるとぐっと減る。火事(での死)だと、建て替えたらリセットという考え方もある。土地にいわくがあるわけで、私はご破算にはしないという立場です。

 家田 何回もお店がつぶれてしまう土地とかありますよね。

 大島 火事で焼け崩れた後に新築マンションができたんですけど、なぜかそこで早速、殺人事件が起きてしまったという例もある。重要なことは、その周辺に事故物件が他にないこと。近所の人は「またあそこか」と。呪いや祟りと言うつもりはないけど、不思議に思います。

 家田 事故物件と承知して借りる人もいる。

 大島 承知のうえなら問題視してません。問題なのは値下げされないままなこと。むしろ値下げすることでバレてしまうから、あえて元通りの家賃なのが問題。

 家田 そうですね。

 大島 事故物件情報を提供する活動をしている根底にあるのは、大家が不都合な真実を正直に伝えているのか、と。正直な大家なのかを見分けるリトマス紙の役割を果たす。そのようなこと(事故物件)を正直に言うかどうか。

 家田 事故物件は売れるんですか。

 大島 安くしさえすれば売れます。ただ貸す場合は、単純に家賃を下げさえすれば解決、という考えに警鐘を鳴らしたい。家賃を下げれば入ってくれるんですけど、残念ながら家賃が安い物件であるほど滞納率が高いんですよ。借金してる人ほど金使いが荒いことに似た話なんです。

 家田 周りの住人が下げろと言ってくる?

 大島 それもあります。家賃を下げないで他のメリットを提供することがあります。保証人、保障会社不要にしたりとか。審査を甘くしているので入居者の質が低下して、そこでいざこざが起きる。スラム化の回転が1回始まってしまうとなかなか元に戻すのは難しくなる。だからもう1回、殺人や自殺が起きるというのは言い過ぎなんですけど、呪いとか祟りよりはそういう解釈の方がしっくりくると思います。

 家田 事故物件に遭ったオーナーはかわいそう。

 大島 事故物件のオーナーはほとんどいないんです。宝くじと同じで。でもたまたま当たった人がものすごく大損をする。そういう特徴があります。まさに「逆宝くじ」と呼んでます。

(対談の模様はユーチューブ家田荘子チャンネルで配信中)