21年6月、この芸能番記者コラムで「芸能人のコロナ感染を報じる意義とは」と題した原稿を出した。新型コロナウイルスの感染が拡大し、政府が発出した3度目の緊急事態宣言が1カ月以上も続いていた。各芸能事務所が連日、所属する芸能人が新型コロナウイルスに感染したと発表するたびに原稿を書き、発信していたが、そのことに対し

「コロナにかかった芸能人のニュース、もう勘弁して欲しい」

との声がSNSを中心に一般の間から出始めていた。

当時、以前から取材をしてきたパパイヤ鈴木(55)が感染したことを受けて、感染の状況、感染予防対策を取材していた。そうして取材した正確な情報を流すことは、一般への啓発の意味でも意義があるのでは? と思い、提起した。予想以上の反響があり、民放の情報番組でも原稿が紹介され、討論会を行った番組もあった。

2週間の入院を終え、退院した鈴木は、リモートで行った取材の中で、重症の肺炎が判明し入院を余儀なくされたことを明かした。その上で「芸能人が感染を公表するなら感染経路を明らかにして欲しい」などという声があることに首を傾げ「大事なの感染経路より、コロナに感染した後、どうするかということです。そこまで報じれば、芸能人コロナ感染報道は、もっと意味があるものになると思います」と語った。

それから8カ月が経過した8日、鈴木が都内の講談社本社で開いた新著「パパイヤ鈴木の元気がでるダンス」発売記念囲み取材会を取材した。軽快にダンスを披露した鈴木だったが、質疑応答の中で新型コロナウイルスに感染した件について聞くと「僕は柴犬か? というくらい、本当に毛が抜けた」と明かした。

「もう、毛の抜け方が半端ない。においがなくなるか、毛がなくなるかってなっちゃう。髪の毛が抜けるのが、きつかった。3カ月続くらしい…僕は止まったんですけど。それを考えると2度と感染したくないくらい、ひどかった」

新型コロナウイルス感染後の取材で、肺炎になったことを明かした鈴木だったが、脱毛については語っておらず、全く知らなかった。自慢のボリューミーな髪は復活していたが「これは、科学の力で…一時期は(脱毛が)すごかった」と口にした。恐らく、8カ月前の取材当時は、口に出来ないほどショックだったのかも知れないと思いつつ、鈴木が感染後、激しい脱毛に苦悩し、2度と感染したくないと語ったという原稿を書き、出稿した。

感染力の強い、オミクロン株の拡大で今も感染者が増え続けている。その中、原稿に対し

「私も脱毛がひどかった」

「においや味覚を感じなくなることが困る、苦しいという声はあるけれど、脱毛がひどいということも、より伝わって欲しいと思っていた」

などの声が複数、あった。恐らく鈴木同様、なかなか言い出せず、悩んでいた人は少なくないのだろうと思った。

鈴木は感染後に取材した時と同様「やれることは限られてきている。うつらないより、うつさないと思うことが大事」と強調した。その考え方もそうだが、感染してしまうことが避けられないほど感染が拡大している中で、感染した中で何を思ったか、何が苦しかったのか、感染拡大しないために必要なことを、発信力のある芸能人が自らの言葉で語り、それを我々、芸能メディアが取材し、正確に報じ、伝える意義はあると、改めて感じた。【村上幸将】