“ロシア3人娘”の牙城を崩せるか――。北京五輪フィギュアスケート女子ショートプログラム(SP=15日、首都体育館)で、坂本花織(21=シスメックス)は自己ベストの79.84点をマーク。ノーミスの演技で3位に入った。カミラ・ワリエワ(15)らロシア・オリンピック委員会(ROC)勢3人のメダル独占が有力視されていた中で、自身の持ち味を十二分に発揮。五輪2大会出場でプロフィギュアスケーターの鈴木明子氏(36)も太鼓判を押した。 

 トレードマークの笑顔はなかった。涙があふれ出た。それは最高の演技ができた証しだった。3本のジャンプを着氷し、他の項目でも高い加点を引き出した。世界トップの“3人娘”を揃えるROC勢に割って入った坂本は「トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)なしでここまで点を挙げられたのは今後の自分にとってすごくいい経験にもなった。この結果をしっかり受け止めて次に進みたい」と振り返った。

 大技を封印し、総合力を高めてきた坂本について鈴木氏は「完成度で勝負するのはもちろん、周りの選手がいろんなジャンプを跳ぶ中で焦るときもあったと思いますが、自分の持っている武器を最大限生かすところを極めたからこそ結果につながったと思います」と高評価。その上でプレッシャーのかかる最終滑走でも自らの滑りを貫いた点をたたえる。「坂本選手の良さでもあるスピード、そして大きなジャンプも一番いいものが出せたと思います。これまでも最終滑走を滑って乗り越えてきた経験と積み重ねてきた練習のたまものだと思います」と目を細めた。

 17日のフリーでは、ROC勢の“最強3人娘”に挑む。金メダルの最有力のワリエワをはじめ昨季の世界選手権を制したアンナ・シェルバコワ(17)、女子初の4回転ジャンプを跳んだアレクサンドラ・トルソワ(17)の3人が表彰台の最有力候補だった。しかし、坂本がロシア勢の一角を崩してSP3位に入ったことで「メダル独占」を覆す可能性もあるという。

 鈴木氏は「ROC勢が最高難度で勝負してきますが、やはりSP同様に坂本選手の良さである一つひとつのクオリティーの高さと圧倒的なスピード感、ここまで仕上げてきた自信を持って、ぜひ『これが坂本花織だ』っていうところを存分に発揮してほしいです」と期待を寄せた。

 一方、5位につけた樋口新葉(21=明大)は大会史上5人目となる3回転半ジャンプを成功させた。鈴木氏は「非常に質のいいトリプルアクセルでした。高さ、そして空中姿勢、着氷、やはり加点ももらえていたので、そういったところが評価されたと思います」と分析。最終組で登場するフリーに向けては「樋口選手の良さが存分に詰まったSPとはまた違ったエネルギーがあふれるプログラムなので、もちろんトリプルアクセルも含めてですが、見ている人がパワーをもらえて幸せになるスケートを伝えてほしいです」とエールを送った。

 SPで会心の演技を見せた両選手。フリーでも世界を驚かせる演技で日本列島を歓喜の渦に巻き込む。