伊勢谷友介に主演オファーだ。フードデリバリーサービス「出前館」の創業者である花蜜幸伸(こうしん)氏(52)が自伝的小説を出版し、話題となっている。年収2億円のタワマン生活から一転、相場操縦容疑で有罪判決を受け、地獄を味わった男が“世界平和”を目指して再起する物語だ。花蜜氏はネットフリックスでの映画化に向け動いており、「主演は伊勢谷友介さんにお願いしたい。彼の復帰作にどうか」と熱望している。

 本のタイトルは「僕は夢のような街をみんなで創ると決め、世界初の出前サイト『出前館』を起業した。」(総合法令出版、発売中)。今でこそ出前館だけでなく「ウーバーイーツ」などフードデリバリーは当たり前の存在になっているが、花蜜氏が出前館を創業した1999年当時はネット環境も整っておらず早すぎたサービスだった。

「初年度の売り上げは10万円。2年目は100万円。火の車でした」。苦労の末、出前館を軌道に乗せることに成功。いったん、経営から手を引いて、経営者団体を設立するなどしていたが、2013年に特別顧問として出前館に復帰した。

「当時の年収は2億円くらい。何をやってもうまくいく時期がありました。いろんなM&Aが決まって仲介料がどんどん入ってきたんです」。しかし、そんな絶頂も16年に暗転する。

 証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反(相場操縦)の容疑で花蜜氏を強制捜査。のちに東京地検特捜部が在宅起訴した。花蜜氏は無罪を主張し、最高裁まで争うも、懲役3年、執行猶予4年、罰金2000万円、追徴金約1億3000万円となった。

「特別顧問になって出前館の株を買い始めていました。そこに株価を下げてやろうという人が現れて、なぜこんな低い評価をされるのだろうと思い、そのころはイキがっていたので友人知人に10億円の借金をしてまで株を買ったのです」

 この行為が相場操縦とされたわけだが、花蜜氏がこのことで儲かったわけではなく、それどころか借金10億円が残り、出前館からも追放の憂き目にあったのだ。

 事件により住所不定の無職となり、友人の倉庫で寝起き。そんなどん底生活のなか、オバマ米大統領が広島を訪問したニュースがきっかけで世界平和に目覚めたという。「オバマ氏の演説は核のない世界を作ろうというものでしたが、『生きているうちには無理かもしれない』というフレーズがあったんです。そこをあきらめちゃいけないだろうと、世界平和について考えるようになったのです」

 花蜜氏は「ピース乾杯プロジェクト」を始動。「世界平和の機運を高めたいが、世界は言葉も宗教もバラバラ。でも、乾杯のアクションは共通だと気付きました。『ピース』と言い合って乾杯するようになれば内面も平和的に変えることがあるかもしれない」

 著作はノンフィクションビジネス小説とうたっているが、中身は花蜜氏のリアルな話。生い立ちから出前館創業、事件による転落も書いてある。

「この本を出版したのはネットフリックスで映画化してもらうためです。世界に『ピース』を広めたい」と訴える。主役となる花蜜氏役には「伊勢谷さんがいいなと思っています。彼も私も執行猶予の身。彼の復帰作になれば。彼は社会貢献に関心が高いですから」と大麻取締法違反で懲役1年、執行猶予3年の判決を受けた伊勢谷を指名。自らの境遇と重ね合わせた。

 東京・汐留のタワマンで朝からシャンパンを飲む生活をしていた花蜜氏は現在、岩手県にある犬猫の殺処分ゼロを目指してつくった保護施設「ペットの里」で活動している。収入はほとんどなく、借金も残ったまま。自宅は施設内に立てたテントだという。

「今の生活の方が楽しい。ペットの里も面白いことになりそうだし、ネットフリックスで映画化されたらと妄想しているだけでワクワクする」

 妄想が現実になるのか。