20日に前立腺がんのため、75歳で亡くなった西郷輝彦さんの代表作のひとつ「どてらい男(やつ)」で共演していた俳優大村崑(90)が21日、取材に応じ、西郷さんは「電話好き」で、昨春に治療でオーストラリアへ行く直前にも電話で話したそうで、人なつっこいままだった人柄をしのんだ。

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「僕も(前立腺の)手術を58歳の時してるからね、大丈夫やって(言い送り出し)。それがまさか…」

言葉を失ったという。

共演した「どてらい-」は、劇作家花登筐が手がけ、山善をおこした山本猛夫をモデルにした少年の立身出世物語。関西テレビ(当時、大阪・カンテレ)が制作し、73年から3年半にわたって放送された人気シリーズは、西郷さんにとって、俳優としての“出世作”となった。

大村は、西郷さんが演じた主人公を温かく見守る支配人にふんしていたが、花登さんからの独立を決め、途中で降板した。

「輝(てる)さんは、いじめられてばっかりの役やったからね。味方がおらんようになって、寂しかったんやろね。降りた後もよう『先輩の声が聞きたかっただけです』言うて、電話がかかってきてね」

そんな西郷さんに、大村は「芸能界はドラマと同じで、足元すくうヤツがいっぱいおるから気をつけて、がんばれよ」と繰り返したといい、西郷さんも、うれしそうに受け止めていたそうだ。

そもそも、大村は番組企画の段階で、花登さんから「輝さん(西郷)を主人公に」と聞いたそうで、ちょうど御三家で橋幸夫らも役者をしており「歌手出身は心があるから、芝居もしっかりできるはず」と即答で賛成していたという。

「どてらい-」を終えて役者としても大成していった西郷さんを、大村は「いい役者になったなあと思ってね。まだまだ若いのに、ほんま、残念でなりません」と口調を強めた。

後年、西郷さんの座長芝居でも一緒になることがあり、その際「(年長の)僕を座長部屋へ入れてね、自分は副座長部屋へ入るんですよ。いつまでも、ものすごい僕をたててくれる人でしたね」とも振り返った。

西郷さんは、20年夏にカンテレ制作の特番「どてらい男」スペシャル座談会で高田次郎と対談しているが、昨秋、その第2弾として、大村と田村亮の3人で対談予定だった。ところが、治療から帰国後、西郷さんの体調が芳しくなく、今春に延期されていた。

大村は「楽しみにしていたんだけど、ちょっと体調がね。でも、まさかですよ。とうとう会わないままにいってしまった」と無念の思いを吐露していた。