【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】これからという存在には興味が湧く。高知・安芸で行われている阪神二軍キャンプではドラフト1位右腕が躍動した。森木大智投手(18=高知高)が23日に初のフリー打撃に臨み、打者2人に41球を投げて安打性の当たりはゼロ。能力の高さを見せつけた。

 対戦相手は同期入団の前川右京外野手(18=智弁学園)と高知高の5歳先輩でプロ2年目の栄枝裕貴捕手(23)。森木は「高めのストレートでは押せていて捉えられなかった」と手応えを口にした。

 着実に階段を上がっている。自主トレ期間から首脳陣の評価は上々。キャンプイン後も順調にギアを上げてきた。21日には今キャンプ最多の60球を投げた。直球にツーシーム、カーブ、スライダー、カット、スプリットと多彩な変化球を織り交ぜた。

 周囲の評判もうなぎ上りだ。同郷の高知出身でもある藤川球児スペシャルアドバイザー(SA)は、ブルペンでの投球をその目で確認。「自分の芯を持って戦っていけば世界に行くでしょう」と称賛した。

 一方で、取材を進めると逆の意見もあった。同じ高知出身のプロ野球OBはこう言った。

「高校時代は甲子園がかかった大事な試合で負けてきた。すなわち『持っていない』わけですよ。ここという場面で実力以上の力を発揮するのがプロで成功する選手。私は森木がプロで大成するとは思わない」

 森木は甲子園に憧れ、高校3年間で5度出場するという目標を持っていたが、夢はかなわなかった。それでもプロ入りに際し、聖地を本拠地とする阪神から1位指名された。その点では「持っている」と言えるのだが。

 藤川SAの見方はちょっと違っていて「高校ではステージが一段上だったから」と独特の解説をする。対戦相手が森木のボールを見極めたわけではなく、対応できなかったことで四球やバッテリーミスにつながるなどの現象が起こりうる。だからこそ「プロで活躍するタイプ」というのが、藤川SAの見立てだ。

 森木は25日のシート打撃登板を経て、3月初旬の教育リーグでの実戦デビューとステップアップしていく予定だ。平田二軍監督は「初めて打者に投げたわりには制球もまずまず。前にゲージがあると投げにくいんだけど、それを差し引いてもいいボール。スケジュール通り。順調」と近未来のエース候補に期待する。

 森木はラストイヤーの矢野阪神で、どんな存在となっていくのか。温かく見守っていきたい。

☆ようじ・ひでき 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。