神奈川県大和市の自宅で2019年に小学1年の次男雄大君(当時7)の鼻や口をふさいで窒息死させた殺人の疑いで自称看護助手で母親の上田綾乃容疑者(42)が逮捕された事件で、17年に死亡した三男も殺害された可能性が高いとみられているようだ。過去の犯罪者の傾向から、専門家が事件を読み解いた。

 県によると17年4月、当時1歳だった三男が上田容疑者の通報で救急搬送された。同容疑者は「気が付いたら息をしていなかった」との趣旨の説明をしたという。

 上田容疑者を巡っては長男が02年に「ミルクの誤嚥(ごえん)」で、長女が03年に「乳幼児突然死症候群か誤嚥」で、いずれも乳幼児期に死亡している。

 日米で連続殺人犯、大量殺人犯など数多くの凶悪犯と直接やりとりしてきた、国際社会病理学者で桐蔭横浜大学の阿部憲仁教授はこう語る。

「日本ではまだあまり注目されていませんが、アメリカでは女性の攻撃性がすでに社会で認知されています。女性の場合、他者からの関心を得られない“ネグレクト”というのは非常に大きな心理的苦痛になり、どんなことをしてでもその空白を埋め合わせようと、病的な攻撃的行動に出るのです」

 その攻撃のパターンは大きく2つだという。

「木嶋佳苗、角田美代子、筧千佐子などのように愛情の代わりにカネに走るパターンがひとつ。そして、非道なやり方で関心を引く代理ミュンヒハウゼン症候群となります。上田容疑者の場合、自分で通報していますので代理ミュンヒハウゼン症候群だと考えられます」(同)

 ここで挙げられた3人は、いずれも周辺で複数の不審死があり、死亡した角田容疑者以外は死刑が確定している。

 代理ミュンヒハウゼン症候群は、自ら子供などにこっそり危害を加えておきながら、他人の前ではかいがいしく世話をすることで、注目を集めようとするのが特徴だ。

「上田容疑者はおそらく元夫と離婚後、男性が見つかっていないため、誰の関心でもいいから集めたかった可能性があります。アメリカで多いのは、他人の子供を殺害する代理ミュンヒハウゼン症候群です。私がやりとりしたジェニーン・ジョーンズは准看護師で60人以上の乳幼児を殺害しました。里親の家庭で他の里子の方がかわいがられていたことが許せず、病院でも最終的に医師が感謝の的になることが耐えられず、自分で乳幼児に細工をしては窮地を救う形で医師を出し抜き、周りからヒロイン扱いされることにはまったようです」と阿部氏は指摘している。