「第29回読売演劇大賞」の贈賞式が25日、東京内幸町の帝国ホテルで行われた。

大賞と最優秀作品集はNODA・MAP「フェイクスピア」が選ばれた。作・演出・出演の野田秀樹氏(66)は、最優秀作品賞は7回目、大賞は3回目となる。

黒のスーツ姿の野田氏は「若い頃に岸田國士賞を受賞した時に、同時受賞した(女優の)渡辺えりから『私はドレスを新調したのに、あんたはジーパンで来た』とネチネチ言われている。そんなことは絶対ないのに。イメージなんでしょうね(笑い)」。野田氏は1972年、東京教育大付属駒場高在学中に初の戯曲「アイと死をみつめて」を書き上げた。「今日は50周年の感謝の気持ちを込めます」と話した。

そして「この作品は(主演の)高橋一生さんと一緒にワークショップみたいなものをやっていた時に芝居にしようと思った。高橋さんありがとうございます。最高のスタッフにかこまれた。アンサンブルの人たちが出ずっぱりで芝居を支えてくれた。彼らと15年くらいやっている。絶賛の言葉をいただいている。彼らが大きな賞を個人としてもらうことはないけれど、支えてくれて感謝しています」と振り返った。

同作は85年の日航機墜落事故のボイスレコーダーに残された言葉から作られた。野田氏は「ギリギリのところで生きようとした人の言葉を使っています。その人は死者なんですが、若い時から自分は死者と会話しながら支えられてきたと気がつきました。いつも死者と対面しながら書き続けてきたんだなと思った。今回は520人の方が亡くなった日航機事件が元になっている」と話した。

そして「一緒に舞台をやった藤木孝さんが自ら命を絶った」と20年9月に亡くなった俳優藤木孝さんの名前を挙げた。「それはコロナ禍で舞台に立つ自信がなくなったからだと思う。いつも舞台に来てくれて『面白かったよ』と言ってくれた。それが最後の『いい天気だ』というせりふにつながったと思う。これからも、実際は生きている人と芝居を作って行きたい。50年分の感謝を込めて、ありがとうと言いたい」と締めくくった。