池松壮亮:「金田一耕助はキャラクター化され過ぎた」 名探偵の“人間”らしさ「取り戻したい」

ドラマ「横溝正史短編集 池松壮亮×金田一耕助3~金田一耕助 惑う」に主演する池松壮亮さん=NHK提供
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ドラマ「横溝正史短編集 池松壮亮×金田一耕助3~金田一耕助 惑う」に主演する池松壮亮さん=NHK提供

 名探偵・金田一耕助が活躍する横溝正史の傑作小説を、俳優の池松壮亮さん主演で「ほぼ原作に忠実に」映像化するシリーズの第3弾「横溝正史短編集 池松壮亮×金田一耕助3~金田一耕助 惑う」が、NHK・BSプレミアム、BS4Kで2月26日午後11時から放送される。金田一といえば、これまで映画やドラマで何度も実写化されてきたが、池松さんは、金田一について「キャラクター化され過ぎた存在」だと語る。役を演じることで、金田一の「人間らしさを取り戻したい」と意気込む池松さんに、同シリーズにかける思いを聞いた。

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 ◇第3弾は“現代性”が色濃く 「Tik Tok」風ダンスも?

 「シリーズ横溝正史短編集」は、「黒蘭姫(くろらんひめ)」「殺人鬼」「百日紅(さるすべり)の下にて」を映像化した第1弾「金田一耕助登場!」が2016年に、「貸しボート十三号」「華やかな野獣」「犬神家の一族」を映像化した第2弾「金田一耕助 踊る!」が2020年に放送された。第3弾では、「女の決闘」「蝙蝠(こうもり)と蛞蝓(なめくじ)」「女怪(じょかい)」を原作とした3エピソードが放送される。

 池松さんは、第3弾の原作のラインアップについて、「題材的にとても面白い三つがそろいましたし、それぞれに何か“現代性”をはらんだ、面白いテーマを持ったものです。個人的に3本とも好きですし、(第1、2弾と比べて)作品性の点でもアップデートされたものとして、ワクワクしながら楽しんでもらえるのではないかと思います」とアピールする。

 “現代性”について、池松さんは「女の決闘」を例に説明する。

 「原作の『女の決闘』は女性たちが生きづらい戦後の激動の時代に、横溝が雑誌『婦人公論』(当時は中央公論社刊)で初めて書き下ろした作品です。(現代にも通じる)この作品はジェンダーの問題を色濃くはらんでいて、女性たちの生きづらさからくる葛藤を捉えた作品になっていると思います」

 第3弾の印象的なシーンについて聞くと、金田一がダンスをする「女怪」のワンシーンを挙げる池松さん。第1弾の「殺人鬼」、第2弾の「華やかな野獣」でも披露したが、今回はなんと「Tik Tok(ティックトック)」風に仕上がっているという。

 池松さんは「この企画において常々、金田一がただお洒落(しゃれ)で格好いいダンスをしてもつまらないなとも思っています。今回はどんなダンスができるかなと考えていたときに、これまで全然見たことがなかったのですが、Tik Tokを見たら踊っている人たちがすごく楽しそうで……。今回はTik Tokみたいに踊りたいと思って相談しました」と説明した。

 ◇市川崑監督が残した言葉 演じる上でのキーワードに 

 池松さんが金田一を演じる上で心掛けてきたことは、金田一を「“人間”に戻すこと」だという。

 池松さんは「金田一はキャラクター化され過ぎた、あるいは“ヒーロー”として捉えられ過ぎた気がどこかしています」と説明。「もしかしたら、金田一ファンは(金田一の人間らしさを)見たくないかもしれないですが、金田一という1人の人生を演じる俳優の“責任”として、金田一に一度ちゃんと人間らしさを取り戻してあげたいと思っていました」と打ち明ける。

 金田一シリーズといえば、故・市川崑監督が数々の実写化作品でメガホンをとったことでも知られるが、「市川崑監督はかつて、金田一を『戦後に舞い降りた天使』と表現しました。これは僕が金田一を演じる上で常々、キーワードになっています」と池松さんは告白。

 「金田一というのは、戦後の人々の混乱を飄々(ひょうひょう)と自分の心を押し殺して引き受けてきたような印象があります。今、コロナ禍という、世界が混乱に満ちている状況で金田一をどうアップデートできるか、金田一というキャラクターをどう再解釈できるかということも今回演じる上で考えました」と話す。

 最後に改めて池松さんが考える金田一の魅力について聞くと、「人それぞれに“金田一像”があると思うのですが、金田一には、何か混乱が起こったときに、それを楽しんでいるのか、悲しんでいるのか曖昧なところがありますよね。事件をさらっと解決して、隠れるようにまた旅に出て行く風情は古き良き日本人的だと思います。そういうところが僕が気に入っているところでもあります」と明かした。

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