テニスのメキシコ・オープン(アカプルコ)の男子シングルス決勝が26日(日本時間27日)に行われ、世界ランキング5位のラファエル・ナダル(35=スペイン)が同12位のキャメロン・ノリー(イギリス)を6―4、6―4のストレートで破り、3大会連続の優勝を飾った。

 今季、ナダルは絶好調だ。年明けのメルボルン・サマーセット(オーストラリア)で優勝し、全豪オープン(メルボルン)では史上最多21度目の4大大会Vを達成。勢いに乗って出場した今大会は準決勝で世界ランキング1位のダニル・メドベージェフ(ロシア)を撃破し、この日の優勝につなげた。

 これで今季15連勝。全仏オープンに代表される「クレーコート(赤土)の鬼」として知られるナダルだが、その強さの秘密は試合会場入りの〝ある行動〟にも隠されている。多くの選手は試合会場入りの際、ラケットをケースにしまって登場。しかし、ナダルは必ず素手でラケットを握りしめて入場する。この日の決勝でも予備ラケットはケースにしまい、試合で使うラケットを直に左手で持って会場に入った。一体、なぜだろうか。

 ウィルソンの公式ストリンガー(ガット職人)を務める細谷理氏は「ナダルは常に試合直前まで素振りをしています。だから、いつもケースに入れずに手に持ってコートへ行くんです」と教えてくれた。実際、この試合前も通路へつながるスペースでフットワークを確認しながら何度も素振りするシーンが中継カメラに映しだされた。すぐ後ろでは関係者がソファに座って談笑していたが、ナダルは体から湯気をあげて無心に素振り。異様な光景でもあった。

 そして、素振りの感触が手に残ったまま、ケースにしまわず会場入り。まさにサムライが刀を鞘(さや)から抜いて戦場へ行くようなものだ。この妥協なき姿勢が通算V回数「91」に詰まっているのだろう。