今年もクリニックをひっそりと開院していた。キャンプ打ち上げの2月28日に4度目の開幕投手に指名された広島・大瀬良大地(30)のことだ。4年連続で大役を託されるのは広島では長谷川良平、北別府学、黒田博樹に次いで史上4人目。エース右腕は「チームがいいスタートを切れるように、責任を持ってマウンドに立ちたい」と表情を引き締めた。

 20日のシート打撃で体の張りを訴えて途中降板したものの、2日後には全体練習に復帰。着実に調整を続けているエースは〝カウンセラー〟として大きな役割を果たしている。直近では15日のシート打撃で打者11人に8安打と打ち込まれたドラフト1位左腕の黒原拓未(22=関学大)へ、その日のうちにラインを送った。

 黒原によれば、内容は「ドラ1とか言われることがあったり周りの目だったりもあると思うし、しんどいと思う。俺もそうだった」というもの。これに励まされた黒原は対外試合初登板となった19日の巨人戦で3者連続三振の衝撃デビューを飾った。

 クリニックの〝大瀬良医院長〟は「そういう経験はみんなしてきているよ、みたいなことだけでも知ってくれたら、ちょっとは楽になるかなと思って。大したことは言っていないです。ちょっと連絡したって感じです」と控えめながら、黒原は「救われた」と感謝している。

 大瀬良には特別なことをした意識もなく「先輩として手助けじゃないですけど、経験した中で伝えられることは伝えていきたい。声を掛けてくれたら誰にでも100%の答えをあげたいと思いますし、そういうスタンスでいます」と言う。

 自身も若手時代には前田健太(現ツインズ)、黒田博樹氏から多くの助言をもらった。「(2人に)1聞いたら10でも20でも返していただいた。そういうことを経験して、ちゃんと結果を残して先輩になる時がきたら、こういう先輩でありたいなと思った」

 時に寄り添い、求められれば的確なアドバイスもする。球界一の気配り上手は「かっこいい背中というか、先輩でいられるように。普段から結果も含めていろんなところで模範となれるように。そんな姿でいたいなと思う」と言い、自身も3月25日のDeNAとの開幕戦(横浜)に向けて万全を期す。