宝塚歌劇団の元雪組トップで女優の朝海ひかる(50)が2日、主演舞台「サロメ奇譚」の取材会に臨み、芸能生活30周年を振り返った。公演は、東京芸術劇場(シアターイースト)で21~31日、大阪はシアター・ドラマシティで4月9~10日。

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91年に宝塚入団、初舞台から丸30年。「最初の15年は宝塚で舞台の基礎を学び、立ち方から勉強して…。宝塚を辞めてからは、宝塚で得たものを土台にしながら、共演者の方から栄養をいただき(学んで)今までやってこられました」。ほぼ半分を宝塚で過ごし、退団後は女優として活動してきた。

宝塚時代の前半の方が「苦しかった」と言い、それは「対応能力がなかったから。がむしゃらに、とにかく『やらなきゃ、やらなきゃ』って」と付け加えた。

もともと、自身を「男っぽい男役ではなくて、頑張って男役をやっていて。(退団後は)よろいがなくなり、肩の荷がおりた感覚はあります」とも。自然体で、女優として歩んできた。

私生活では昨年末、V6坂本昌行と結婚。大きな変化もあった。それでも「舞台に立ち続けて、お客様の前に立ち続けていきたい思いは変わらない」と言う。同時に「年を重ねた人間だからこそできるような役。新しい役に挑戦したい」と40年、50年も見据える。

その中で、30周年の節目に主演する舞台が今作。「サロメ奇譚」は、オスカー・ワイルドの不朽の名作「サロメ」を現代に置き換えて描く。資産家一家の一晩のできごとを舞台化。朝海は「無垢(むく)」な中に狂気を秘めるサロメを演じ、義父の還暦祝いに招かれた預言者に急速にひかれる。一瞬にして、悲劇へと歯車が回りだしていく。

「サロメは純心無垢なイメージで、最初は戸惑いもありましたが、この年でサロメもおもしろいかなと考えるようになりました」

自身も幼いころからバレエを習い続け、バレエダンサーを目指したが挫折した経験があり「そこは少し共感できるかな」。ただ、突然目の前に現れた預言者へ思いを燃え上がらせてしまう流れには「私はアイドルにキャーってなることはなかったですし、遠くて手が届かない人間に恋をしてしまうということもなかなか、なかった」と苦笑。役柄の心情へ寄り添い、想像しながら稽古に向かう。

「でも、舞台に上がれば何にでもなりきれる。性別も越えられると宝塚の時から信じていたので、舞台のマジックを使って『朝海ひかる、まだ無垢(な役)できるんだ』って思ってもらえるように」と気を引き締め、節目公演に臨む。