体操界のキング・内村航平(33=ジョイカル)が12日、自身の引退イベント「KOHEI UCHIMURA THE FINAL」(東京体育館)で現役生活にピリオドを打った。

 2016年リオ五輪団体金メダルのメンバー、昨夏の東京五輪メンバーらとともに最後の舞台に立ったキングは全6種目を実施。最後の鉄棒の演技が終わると、出場選手と抱き合い、胴上げで6度宙に舞った。

 クロージングセレモニーでは人気デュオ・ゆずの「栄光の架橋」の音楽が鳴り響き、満員に膨れ上がった会場は一体となった。父・和久さんから手紙が贈られ、リオメンバーの白井健三さん、東京五輪2冠の橋本大輝(順大)からはお祝いのメッセージが読み上げられた。

 また、二人三脚で歩んできた佐藤寛朗コーチから花束を贈呈され、最後は会場を1周しながらTシャツをスタンドへ投げ込むファンサービス。すすり泣くファンや選手もいたが、内村は最後まで笑顔を見せ、涙はなかった。

 マイクを握ったキングは「体操を始めて30年つらいことしかなかった。こうして日本代表の仲間たち、自分自身で勝ち取ってきた結果、技を習得したときの喜びがつらさを凌駕しました」と振り返った。ラスト種目の鉄棒では着地が止まらず、やや悔しさを見せたが「今日も最後の最後で鉄棒がそんな良くなかったし、これが潮時かなという気がした」と語った。

 さらに内村は「結構、泣かれている方もいらっしゃいましたが、僕の体操人生はここで終わりというか、新しい一歩を踏み出す意味で前を向いています」と話した上で「ホントに僕は幸せな体操人生を歩ませてもらった。ここでは絶対に終わらない。こうして表に出る機会があると思う」と涙を封印した理由を語った。

 ファン、選手、関係者に感謝の意を伝えたキング。中でも会場の心を打ったのは両親への思いだった。

「ここに立っている以上、ここまで体操を続けさせてくれた体で産んでくれた両親にはすごく感謝しています。この場を借りて感謝を申し上げたいと思います」

 この言葉が発せられると、この日最も大きな拍手に包まれた。