あなたの話をお聞かせください――。作家で僧侶の家田荘子氏が気になる人物に迫る「駆け込み寺」対談編。話すことで自身を見つめ直し、人生の学びを見いだす。今回のゲストは作詞家の及川眠子氏(62)。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニング曲「残酷な天使のテーゼ」などのヒット曲を手掛けた。一方、私生活では18歳年下のトルコ人と男性と結婚し、3億円を貢ぎさらに7000万円の借金を背負った。そんな婚姻生活を「おもしろかった」と話した及川氏の思考とは――。

 家田 作詞はすぐに書けるようになった。

 及川 書けましたね。作曲家の人と話してて「曲というのは練習すると書けるんだよ」って。アレンジも演奏も練習するとできるし、うまくなる。でも、詞だけは書ける子は最初から書けるって。

 家田 どういう時に書くんですか。

 及川 締め切りの時(笑い)。締め切りがないとやらない。

 家田 売れたと実感したのは。

 及川 Winkの「愛が止まらない」。洋楽曲のカバーなので作詞料は買取り。当時、新人だったんで3万円。

 家田 3万円だけ。

 及川 次の「涙を見せないで」も買い取り。その次の「淋しい熱帯魚」はオリジナルなんで印税が入ってくる。それ見た時すごいなと思いましたけどね。

 家田 「残酷な天使のテーゼ」はどれくらいのお金を産んだ。

 及川 ちゃんと計算してないけど、エヴァ関連だけだと6億行ってないかな。年収じゃなくて年商。1億になったのは1回だけで後は1000~3000万、時々5000万。パチンコ台が当たりだして6000~7000万円になった。

 家田 18歳年下のトルコ人と結婚して3億円を失って、さらに7000万円の借金。請求されたりするんですか。

 及川 請求というよりも、こちらが出すように、自分の夢を語りつつ説得する。送迎の仕事を覚えたいから車がいる。だから600万円とか。そんなことがいっぱいあった。

 家田 結婚前から? 結婚したらもっと取られると思わなかった。

 及川 出さないという選択肢もあるんです。でも出したら喜ぶから。私、簡単なんですよ。お金で解決するんならお金で解決しましょうと。

 家田 一生懸命、作詞されて稼いだ。あげるの惜しくないんですか。

 及川 でも、それ他に使い道あります? ためるだけですよね。ブランド品に興味あるわけじゃないし、いい車が欲しいとかそんなにないんですよ。

 家田 最高に使ったのは。

 及川 ホテルを建てるためにカッパドキアの洞窟を買った。7400万ですね。

 家田 結局、どうなったんですか。

 及川 離婚した後、(ホテルも建てずに)売っちゃったみたいですね二束三文で。

 家田 7000万の借金はなんですか。

 及川 彼の名前ではお金を借りられないんで、私の名前で銀行、知人から借りたお金。4年半ぐらいでほぼ完済しました。

 家田 婚姻生活は何年続いたんですか。

 及川 9年。一緒にいたのは13年ですね。

 家田 振り返ると、その13年は何でしょう。

 及川 おもしろかったですよ、すごく。いろんな人たちに言われたんですよ。あんな男と一緒にいるといろんな物、キャリアを失くすよって。時間に関してはおもしろいと思ってる。だってこんな体験させてもらえない。こんなおもしろい時間をお金で買ったと思えばいいじゃん。それでなくすキャリアはキャリアではない。そんなに後悔もしてないけど、もう年を取ってきたからそれはいやだなと思うくらい(笑い)。(対談の模様はユーチューブ家田荘子チャンネルで配信中)。

☆おいかわ・ねこ 1960年2月10日生まれ。和歌山県出身。85年に三菱ミニカ・マスコットソング・コンテスト最優秀賞を受賞し作詞家デビュー。Winkの「淋しい熱帯魚」、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の主題歌「残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」など多数のヒット曲を手掛ける。