ウクライナサッカー協会(UAF)が元同国代表主将で現在はロシア1部ゼニトでコーチを務めるアナトリー・ティモシュチュク氏(42)を永久追放とした処分に対し、クラブ側が猛反発してスポーツ仲裁裁判所(CAS)への提訴を表明した。

 ティモシュチュク氏を巡ってはウクライナ侵攻後もロシアで指導を続け、ロシアに対する非難メッセージも行わなかったとしてUAFが問題視。倫理委員会を開催した結果、指導者ライセンスや現役時代に獲得した国内タイトルのはく奪、代表チーム選手としての出場経歴の抹消、さらにはウクライナでのサッカーに関する全活動を生涯にわたって禁じる〝永久追放〟を課した。

 しかし、ティモシュチュク氏はロシアで勤務する環境にあるため表立ってロシア批判を展開するのは難しく、本人の主張も聞かずに厳罰を下したことにはウクライナ内外から疑問の声も上がった。

 そうした状況の中、所属するゼニトが緊急会見を開催。ロシア国営通信社「RIAノーボスチ」によると、ゼニト側は「ティモシュチュクは、アスリートとしてプレーし、コーチとして働いたすべての国で仕事に対して誠実な態度をとっている素晴らしいプロだ。彼のコーチの資格については疑いの余地がない。UAFの決定は政治的ジェスチャーだ。サッカーは政治から離れ、政治的ゲームの一部であってはならない。ゼニトはCASでコーチの利益を守る準備ができている」とCASへ提訴する方針を表明した。

 ウクライナ人コーチを巡って深まる両者の対立。今後の動向に大きな注目が集まる。