【ニュースシネマパラダイス】どうも! 有村昆です。連日報じられている通り、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いています。やはり世界はこのニュース一色なので、前回に引き続き、ロシア・ウクライナ戦争を深堀りしたいと思います。

 今回ピックアップするのはドキュメンタリー映画「ウクライナ・オン・ファイヤー」(2016年)です。前回「ウインター・オン・ファイヤー ウクライナ 自由への闘い」を紹介しましたが、僕が指摘した通り、ロシアの言い分が盛り込めていませんでした。ところが「ウクライナ――」は双方半々になっています。メガホンを取ったのは「プラトーン」や「JFK」のオリバー・ストーン監督です。

 まず、監督が描くのは、歴史的な経緯ですね。ウクライナは地政学的に東西のパワーゲームに翻弄されてきました。17世紀から他国の侵略にさらされてきたのです。第2次世界大戦時にはナチス・ドイツがウクライナに侵攻し、そこからポーランド、さらにはロシアにまで手を伸ばそうとします。いわゆるユダヤ人虐殺が行われたのですが、それを救ったのがスターリン率いるソ連。ウクライナは「ロシアが守ってくれた。ありがとう」と感謝し、ソビエトの一部になりました。結局1991年のソ連崩壊後に独立することになりますが、ポイントになるのはネオナチが残ったことです。

 ネオナチはウクライナ国内で起こった2度の革命(04年、14年)を先導。そしてオリバー・ストーン監督によると、そのネオナチに資金援助していたのが何と米情報機関CIAだというのです。いや~これにはビックリ。要するにナチスの思想を受け継ぐ組織でさえも、ロシアの防波堤として利用したというわけ。だからこそプーチン大統領は今でもネオナチを敵視しているのです。

 もちろん、これはあくまでオリバー・ストーン監督の取材や見解を基にしているので、事実かどうかまで正直、僕はわかりません。あとは皆さんに判断していただくしかありませんが、ウクライナの問題はとても根深いということ。そして「ウインター――」だけでは見えなかった視点があるということだけは言えそうですね。現在もユーチューブで見られるようなので、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。  

ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。