もう鎮火してしまったのか。巨人・小林誠司捕手(32)が一進一退だ。昨季まで2年連続で打率0割台に低迷したが、11日から今季初めて一軍に昇格すると一発を含む3安打の固め打ち。環境が変化すると、しばしば〝突然変異〟を起こすのが特徴の一つでもある。後塵を拝す正捕手争い、さらにはオープン戦最下位に沈むチームの起爆剤としても期待されるが…。

 どうにも結果が伴わない。15日の中日戦(バンテリン)では、開幕ローテ候補の山口が初回に満塁弾を浴びて2回4失点。主砲・岡本和が上半身の違和感のため大事をとって欠場となり、2―6で敗れた。オープン戦とはいえ、引き分けを挟んでの7連敗に原辰徳監督(63)は「桜は早く開花しそうだけど、わが軍はなかなか開花させないよ、まだ。開花を待ってください!」と気丈に振る舞った。

 飛び抜けて明るい話題も見当たらないなか、起爆剤となりかけたのが小林だ。今春のキャンプ直前に新型コロナに感染。調整遅れも響き、キャンプ中は一軍から招へいされることはなかった。転機を迎えたのは捕手陣の入れ替えが行われた今月11日。さっそく守備で結果を残すと、翌12日はオープン戦1号を含む3打数3安打の大当たりをみせた。

 ファーム暮らしのうっぷんを晴らすかのような暴れっぷりだったが、何かのきっかけで別人のように覚醒するのも魅力の一つ。2018年もそうだ。オープン戦では空回りが続いたものの、開幕を迎えた途端に打ち出の小づち状態となり、規定打席に到達した4月下旬には「打率3割7分5厘」で首位打者に躍り出た。あまりの変貌ぶりに「春の珍事」とささやかれ、当時の首脳陣からも「夏の珍事までいってほしい」と懇願されたほどだった。

 また、17年のWBCでも侍ジャパン内でトップとなる打率4割5分(20打数9安打)、1本塁打、6打点。同年に初めて出場したオールスターでは初打席で球宴初アーチをかけた。138試合に出場した同年のシーズンでは2割6厘だっただけに、やはり環境の変化が〝突然変異〟をもたらす傾向は否めない。

 ただ、ネックとなるのは好不調の波が激しすぎる点だ。18年に首位打者に立ったのは一時的。小林の「誰か僕に魔法をかけてください」との願いもむなしく、失速して最終成績は2割1分9厘だった。

 今回の一軍昇格が起爆剤となり、後輩の大城がリードする正捕手争いに「待った」をかけるのか。それとも18年の〝逆パターン〟で、オープン戦で好成績を残しても開幕後に大ブレーキがかかってしまうのか…。この日は投ゴロ、中飛の2打数無安打で代打を送られた。「いつ呼ばれてもいい準備をしようという気持ちで三軍でも二軍でも過ごしていた。まだまだやるべきことはたくさんある」と貪欲な姿勢をみせていた小林。この先はどこへ向かうのか。