フィギュアスケート・アイスダンスの“かなだい”こと村元哉中(29)&高橋大輔(36=関大KFSC)が23日開幕の世界選手権(フランス・モンペリエ)に挑む。結成2季目の2人は驚異的な進化を遂げる一方で、リズムダンス(RD)で使用する2種類の衣装がファンらの間で注目を集めている。「赤黒」と「白」の両バージョンはともに最高傑作ともいわれる中、本紙は製作を手掛けたデザイナーの原孟俊氏(37)を直撃。異例の“二刀流衣装”の魅力に迫った。

 赤黒か、白か――。今季のRDは「ミッドナイトブルース」がテーマ。かなだいは「和」のテイストを入れた「ソーラン節&琴」を選曲し、プログラムを最大限に引き立てる2種類の衣装が用意された。今季出場した5つの競技会は全て村元が赤中心、高橋が黒中心の衣装を使用しているが、実は2人が白で揃えた“ホワイトかなだい”と呼ばれる衣装も存在する。

 昨年11月のワルシャワ杯のエキシビション、同12月の全日本選手権の公式練習で使用されたが、競技本番ではいまだ封印中。村元は白バージョンをとても気に入り、名コーチで知られるステファン・ランビエル氏も「今季のフェイバリット衣装」と絶賛しているだけに、初披露の期待が高まっている。

 衣装を手掛けた原氏は「最初にいただいたオーダーは赤黒で、その後に白バージョンも追加。基本的に衣装は(同一のプログラムで)使い分けることは少ないですが、今回は両方とも捨てがたく、とても評判がいい珍しいケース」と話す。しかも、それぞれの衣装は独自のストーリーを持ち、こだわりが詰まっているのだ。

 まずは原氏が「時代と国境と人種を超えた融合」と表現する赤黒バージョン。フィギュアスケートの源流でもあるバレエやクラシックの文化に加え、ブルースのルーツでもある黒人文化の哀愁、さらに「ソーラン節」の背景にある北海道の漁師の雰囲気が絶妙に入り交じっているという。

「高橋さんの魅力は両極端な要素を取り入れ、新しいものを生み出すところ。きれいで端正なのに、ちょっとヤンチャで崩れている今回の衣装と見事に一致しますね」

 衣装を製作する過程で高橋は「着崩した感じに」「きれいにしないでほしい」と注文。あえて白い襦袢(じゅばん)を下からはみ出させる工夫も凝らされている。
 一方、白バージョンのコンセプトは「神事」「祭祀(さいし)」だという。原氏は「ソーラン節といえば北海道のニシン漁。アイヌ文化は精霊信仰が強いので、神事や祭祀的な文脈を白い生地と独特な柄の生地で表現しました」と説明した。

 前例のない“二刀流衣装”に、原氏は「今までにないものができた。2人が着たことで衣装の輝きも増しています」と満足げ。大会本番では2人の演技とともに、どちらの衣装が使用されるかにも注目だ。